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フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
摂食障害、2度の五輪…鈴木明子36歳が語る“遅咲きのスケーターと呼ばれた現役時代”「『自分を大切にする』と『競技性』は相性が悪い」
text by
小泉なつみNatsumi Koizumi
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2022/02/15 11:03
ソチ、バンクーバーの2大会に出場している元フィギュアスケーターの鈴木明子さん
鈴木 3回転、3回転の連続ジャンプを跳べるようになったのも26歳とかなり遅めでした。小さい時から何かを習得するのに人より時間のかかるタイプだったことは間違いありませんね。
――周りの子たちがどんどん課題をクリアしていくと、焦りますよね。
鈴木 浅田真央さんがトリプルアクセル、安藤美姫さんが4回転を達成していく中、私は10代の時からジャンプが得意ではなかったこともあり、正直、取り残されている気持ちがありました。
特に小さい時はなんでもすぐできる子が褒められやすいところもあるから、悔しい思いもしましたね。
――「早さ」って誰でも見た目にわかりやすいんですよね。しかしそんな中で鈴木さんは、努力し続けられる力があったんですね。
鈴木 「なんでもっと早くできないの」と言われなかったのは大きかったと思います。母も昔から、「あなたは頑張れば必ずちゃんとできる子だから」と励ましてくれました。(長年鈴木さんのコーチを務めた)長久保裕先生もなにかの取材で、「小さい頃の明子には目を引くような才能は何もなかったけど、一生懸命努力し続けられる子だと思った」と話してくれていました。
それに18歳の時に病気を経験したので、競技生活の継続にあたっては、「自分は大器晩成型なんだ」と信じないとやっていけないところはありましたね(笑)。
18歳で摂食障害…161cmで体重は32キロまで落ちた
――18歳の時のご病気というのは、摂食障害のことですよね。
鈴木 大学進学直前の17歳の時、ステーキを食べたら胃液を出し尽くすほどの激しい嘔吐に襲われて。当時からダイエットをしていて、肉を口にしたのは数年ぶりでした。でも吐き続けたおかげで、なかなか落ちなかった体重がスルッと数キロ落ちていたんです。
――フィギュアという競技は体重コントロールとの戦いとも聞きます。
鈴木 それで欲が出てしまったんでしょうね。以来、何か食べたいけど太りたくないと悩んだ結果、何も口にできなくなっていました。
最終的には161センチで48キロだった私の体重は32キロに。常に寒くて震えが止まらず、歩くこともままならない状態でした。
「自分を大切にする」と「競技性」は相性が悪い
――高難度のジャンプの達成に軽い体重が求められるのであれば、女子スケート選手なら誰もが鈴木さんのような状態に陥ってもおかしくないですよね。