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J開幕前の調整ではなく…浦和にとって「決勝」だったスーパー杯 “リカルド監督が暗示した2-0”とタイトル獲得への飢え 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byKaz Photography/Getty Images

posted2022/02/14 11:02

J開幕前の調整ではなく…浦和にとって「決勝」だったスーパー杯  “リカルド監督が暗示した2-0”とタイトル獲得への飢え<Number Web> photograph by Kaz Photography/Getty Images

西川周作とともにスーパー杯を手に喜ぶリカルド・ロドリゲス監督。会心の表情から、このタイトルを本気で狙っていたことが伝わる

 また、川崎の右サイドバックの山根視来がボールを持った際には、左サイドハーフの伊藤が激しく寄せるが、自陣に押し込まれた際には、江坂任が左サイドに落ちて4-5-1になる、といった具合だ。

 一方、ボール保持の際には、岩尾が最終ラインまで落ちることがあり、その際には伊藤がボランチに入ることがあった。関根はサイドハーフのようでシャドーのようでもあり、江坂は流れのなかで中盤に落ちて、チャンスメイクに回ることがあった。

 しかも、リードして迎えた後半には明確に4-5-1に変更し、川崎の反撃に対抗した。リカルド・ロドリゲス監督が説明する。

「押し込まれる時間が長く、どうしても人数をかけて守らないといけなくなり、江坂がサイドでディフェンスのサポートに入る機会が多くなっていた。そこをはっきりさせるために、相手のインサイドの選手がゴール脇に侵入してくる機会が増え、そのランニングに付いていくために、中盤の枚数を増やした」

懇親会で口にしていた「私は2-0でも十分ですよ」

 シチュエーションに応じた立ち位置の変化、素早くスムーズな修正は、指揮官の戦術がチームに浸透している証しだろう。

 江坂のゴールで7分に先制し、その後、相手に押されながら我慢する展開で思い出したのは、21年12月19日に行われた天皇杯決勝だ。

 あのときも江坂のゴールで先制し、大分トリニータに反撃を許してゲーム終盤を迎え、終了間際に同点ゴールを奪われてしまった。

 槙野智章の劇的な決勝ゴールで大団円となったが、ゲーム運びや守備には課題が残った。

 しかし、この日は川崎に決定機を許さないまま、81分に江坂が再びゴールを奪い、2-0と突き放すことに成功した。

 前述した懇親会で「シンコ・セロ(5-0)を期待しています」と冗談混じりに伝えると(昨年3月の対戦で浦和は川崎に0-5で敗れているため)、指揮官は笑顔でこう返した。

「その結果を保証できるなら、今すぐ書類にサインします。私は2-0でも十分ですよ」

 思えば、実に暗示めいた答えだったわけだ。

「川崎に快適にプレーさせないようにする」を体現

 新加入の岩尾が緩急をつけながら攻撃のリズムやゲームの流れをコントロールし、馬渡和彰は対峙した家長昭博にまるで仕事をさせなかった。

 アレクサンダー・ショルツは常にレアンドロ・ダミアンを視野に入れながら、こまめなラインコントロールで駆け引きし、酒井宏樹はいったい何度ボールを持ち運んだことか。

【次ページ】 ユンカー、小泉、松尾、モーベルグらが欠場しただけに

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