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ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「チームを掌握している」「自信の再構築に成功した」トルシエが高く評価したサウジ戦の森保采配のポイント
posted2022/02/05 17:03
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Kaneko/JMPA
フィリップ・トルシエインタビューの後編である。
話題はサウジ戦の分析から3月24日に控えるもう一つの大一番、アウェーでのオーストラリア戦へと移っていく。日本が勝てばワールドカップ本大会出場が決まる試合を、どう戦うべきとトルシエは考えているのか。また、ここまで日本代表を率いてきた森保一監督に、彼はどんな印象を持っているのか……。(全2回の1回目/#1はこちら)
森保のコーチングは適切だった
「森保も試合には満足していたか?」
――満足していましたが、冷静さを保ち続けていたのはいつも通りでした。それから選手のピッチ上での判断が……。
「それが違いを作り出した。森保のコーチングも適切で、試合を見事にコントロールした。サポーターもスタンドからチームを支えた。危ない場面はまったくなく、GKの権田(修一)にとってはとても静かな試合だっただろう。サウジは彼のところまで近づけなかった。それは日本の中盤に力があったからだ。中盤は屈強だった」
――中盤を制した日本が優位に立ちました。
「南野(拓実)は守備で献身的に働き、伊東も守備での献身を厭わなかった。たしかに左サイドはちょっとやられたが、それでも南野の働きは素晴らしかった」
――田中と守田も……。
「彼らもそうだし、もちろん遠藤(航)もだ。スーパーなチームではないが、連帯感に溢れた好チームだ」
――主力ふたりを欠いたサウジは、移動や時差、気候の違いなども重なって力を発揮しにくかったのではないですか?
「サウジのプレースタイルはちょっとヨーロッパスタイルだ。後方から攻撃を構築し、ゲームをコントロールしてパスを繋ぐことを好む。好きにプレーさせたらとても危険だ。ボールをキープしてのテクニックでは日本よりも優れている。
日本は逆で、できるだけ早くボールを味方に渡す。素早くパスを繋ぐのが日本のスタイルで、テンポよくボールを回すから、そこに個の能力が介在する余地はない。つまり日本はコレクティブなマシンで、このマシンがボールを流動的に回して相手を走らせる。日本のこの戦い方が、サウジの力を封じ込めてゲームをコントロールした。