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「羽生は“川の流れ”のよう」「鍵山なら5回転も跳べる」元フィギュア金メダリスト、ボイタノが熱弁する日本勢のスゴさと可能性
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAFLO
posted2022/02/05 11:04
1988年カルガリー五輪王者のブライアン・ボイタノ。引退後には自身の料理番組を持っていたほどの人気者だ
18歳・鍵山への期待「彼なら5回転が跳べる」
だがボイタノがもっとも注目していたのは、18歳の鍵山優真だという。
「カギヤマは、次世代を築く選手。彼は多分、世界で最初に5回転ジャンプを成功させることができる選手の一人になるだろうと思います。彼の4回転のジャンプを見ると、まだ余裕がある。ジャンプの高さ、体型、そして若さを持っている。次の世代を牽引していくだろうと思うんです」
ボイタノは、鍵山の父である正和氏とリレハンメルで同じオリンピックに出ている。鍵山氏はこの大会で12位だった。
「そうなんですよね。実は2日前にユカ(佐藤有香)に、『94年に彼の父親とぼくは同じ大会に出てたっけ?』と聞いたところだったんです。出ていたようですが、でも話したことがなかったので、記憶にはありませんでした」
88年の王者、ボイタノにとってのオリンピックとは?
もう20年近く前に個別取材をした際に、彼が語ってくれた中でとても強く記憶に残っていることがあった。カルガリーオリンピックでは、演技中に何かが自分を引っ張りあげているように感じ、リレハンメルではその逆に、何かに押しつぶされるような圧迫感があった、というのである。それは彼の精神的なものだったのだろうか。
「精神的なものだけではなかった、とぼくは思います。何か我々を超えた見えない存在が、カルガリーではぼくを引き上げてくれて、リレハンメルではぼくが勝つべきではない、というように押さえつけてきた。自分では今でも、その理由はわかりません。なぜカルガリーでは良くて、リレハンメルではだめだったのか。でもそれは、確かに人智を超えた何か説明できないものの存在だったような気がします」
ボイタノはリレハンメルオリンピックのSPで、それまで失敗したことがなかった3アクセルでステップアウトし、SP8位。総合6位に終わった。