フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「羽生は“川の流れ”のよう」「鍵山なら5回転も跳べる」元フィギュア金メダリスト、ボイタノが熱弁する日本勢のスゴさと可能性
posted2022/02/05 11:04
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
AFLO
1988年カルガリー五輪王者、ブライアン・ボイタノは、ブライアン・オーサーと接戦を繰り広げ、「バトル・オブ・ブライアンズ」と呼ばれる名勝負を制した選手だった。プロとして活躍した後、1994年リレハンメルオリンピックでアマチュア競技復帰。二度目の金を目指したが、6位に終わった。その後長いプロ活動を続け、米国では自分の料理番組なども持っていて、未だに人気者である。そのボイタノが、ナッシュビル全米選手権で独占取材に応じた。
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1988年カルガリーオリンピックのフリーでは、2度の3アクセルを含む3回転を合計8本成功させて、当時の男子としては最高難易度のプログラムを滑り切ったボイタノ。34年後の現在の男子を、どう見ているのか。
「いずれは全種類の4回転を跳ぶ選手が出るだろうとは、予想していました。ただ同時に、それに向いた体形が必要とされるだろうと思っていました。ぼくは4トウループは練習でやっていて、当時本当に必要だと思ったら恐らく2種類はできたと思う。でもそれ以上は、ぼくの体形では無理だったと思います」
ナッシュビルで久しぶりに再会したボイタノは、記憶にあるより一回り小さく見えたものの、元々身長180センチで、筋肉質のスケーターだった。
「これからの男子チャンピオンは、ぼくたちの世代の選手のように大柄ではなくなるでしょう。今の世界のトップ5の男子は全員アジア系ですが、小柄で動きが機敏で、4回転ジャンプをやるのに理想的な体形。また技術も変わってきました。こうしたことは、スポーツのごく自然な進化だと思います」
「ハニュウの動きは“川の流れ”のよう」
男子のトップ選手たちについて、ボイタノはこう語った。
「ネイサンとハニュウの二人は、すごく違います。同じなのは、二人とも高い技術を持っていること。ネイサンはとても姿勢が良く、美しい滑りを見せます。技術は正確で、安定している。その一方でハニュウは、まるで液体のような動きができる。岩をきれいに避けて流れていく川の流れのようです。エッジの質が柔らかくて、静か。そしてあっという間にテイクオフしている。二人とも強くて、彼らの勝負を見るのが大好きです。二人を見ていると、ぼくとブライアン・オーサーみたいだなと思うんです。オーサーはぼくをプッシュしてくれたし、ハニュウとネイサンもお互いを刺激し合い、プッシュしあって成長してきたと思います」
さらにボイタノは、こう言葉を続けた。
「ショウマは過去数年で、とても成長した。彼はスケーティングの質がとても高く、同時に彼の身体能力の高さには常に驚かされています。そしてビンセント・ジョウ。彼のスピードとジャンプの高さはすごいと思う。こうした強い選手が同時代に揃ったということが、素晴らしいと思うんです」