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野球殿堂入りの資格を失ったボンズとクレメンス、ステロイド“黙認時代”だったから許されるべき?《アメリカで議論に》 

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四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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posted2022/02/03 17:00

野球殿堂入りの資格を失ったボンズとクレメンス、ステロイド“黙認時代”だったから許されるべき?《アメリカで議論に》<Number Web> photograph by Getty Images

メジャー通算762本塁打、唯一の500本塁打500盗塁のボンズ(左)と、354勝、サイヤング賞7度のクレメンス。二人の偉業が再評価される日は来るか

 もっとも、近年は徐々に風向きは変わり始めていた。資格1年目の13年、2人の得票率は40%にも及ばなかったが、若い世代の記者投票が増え始めたこともあり、最終年となる今回の10年目はボンズ氏が66%、クレメンス氏が65.2%までアップした。これまで、すでに殿堂入りしたマイク・シュミットやリッチ・ゴセージが、規制がなかった現役当時、現在では禁止薬物とされる「アンフェタミン」を使用した過去を告白。

「規制後」に出場停止処分を受けたマニー・ラミレス、アレックス・ロドリゲスらとは一線を画し、ボンズ、クレメンス氏らを「規制前」と考慮する論調が広まり、14年以前のように有資格年数が15年のままであれば、5年以内に75%に達するだろうと予想する意見も聞かれた。

 今回の投票結果発表後、ボンズ氏は自らの選出漏れに触れることなく、オルティス氏へのメッセージを残した。

「野球殿堂入りおめでとう、ビッグ・パピ。実にふさわしい選出で……愛しているよ。マイ・ブラザー」

 また、クレメンス氏は、「私と私の家族は、野球殿堂のことは10年前に忘れてしまった。私は野球殿堂入りするために野球のプレーをしていたわけではない。家族をはじめファンのサポートに感謝したい」とのコメントを発信した。

悪いのは選手なのか球界なのか

 米国内には、投票権を持つ記者は薬物使用を巡って「シロ」か「クロ」かを判断する裁判官ではないとの意見もある。ただ、各選手が残した実績だけでなく、社会性やスポーツマンシップをも考慮するのは当然で、賛否両論に分かれている状況は変わっていない。

 現時点で、ボンズ氏らの殿堂入りへの扉は完全に閉ざされたわけではない。今回、BBWAA(全米野球記者協会)の投票による資格を喪失したとはいえ、今後ベテランズ委員会によって選出される可能性は残されている。

 規制がなかった当時、薬物に手を染めた選手個人を非難すべきなのか、それらの悪しき流れを見逃してきた球界を追及するべきなのか。

 万人が納得できるような答えは、簡単には出せそうにない。

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