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《アブダビGP徹底検証》フェルスタッペンの逆転劇を生んだレースディレクションの正当性…セーフティーカー本来の役割とは?
posted2022/01/28 06:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
最終戦から1カ月以上が経過し、年が明けたいまも、F1は2021年を引きずったままだ。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)が同点で迎え、21年シーズンのチャンピオン決定戦となった最終戦アブダビGPは、前代未聞のレースとなった。
問題となったのは、レース終盤に出動したセーフティーカー(SC)後の再スタートの手順だ。
レギュレーションでは、SCがピットインする前に、周回遅れのマシンが先頭のマシンとSCを抜いて同一周回に戻ることが許され、最後尾のマシンが前に出た次のラップ終わりにSCはピットに入り、レースは再スタートが切られるよう定められている。
しかし、アブダビGPでは先頭のハミルトンと2番手のフェルスタッペンの間にいた5台のみを先に行かせ、フェルスタッペンの後方にいた3台にはその許可が降りなかった。さらに5台の周回遅れのマシンが前に出た57周目の終わりにSCがピットに入り再スタート。つまり、レギュレーションより1周早く再スタートが切られた。
ファイナルラップに再開されたハミルトンとフェルスタッペンの戦いは、直前に新たなソフトタイヤに交換を済ませていたフェルスタッペンが、周回を重ねたハードタイヤのハミルトンをオーバーテイクして逆転優勝。劇的な形でチャンピオンシップが決定した。
「これがモータースポーツなんだよ」
58周のレースの57周をリードしていながら、逆転負けを喫したメルセデス陣営は納得がいかない。メルセデスのトト・ウォルフ代表は、通常とは異なる手順で再スタートさせたレースディレクターのマイケル・マシに無線で抗議した。
「ファイナルラップの前のポジションに戻すべきだ。これは正しくない」
レギュレーション通りの手順ならば、57周目に周回遅れのマシンを先に行かせるなら、SCはその次の周(58周目)の終わりにピットインすることになる。レースは再スタートされず、ハミルトンがトップのままチェッカーフラッグを受け、チャンピオンを獲得していたというのがメルセデス側の主張だ。
これに対して、レースディレクターのマシは、こう諭した。
「これがモータースポーツなんだよ。われわれはレースをやったまでだ」