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「不思議な感じ」松山英樹のパットはなぜ冴えたのか? ハワイでの逆転勝利を引き寄せた“エクストラのパワー”《米ツアー8勝目》
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2022/01/18 06:01
今季2戦目のソニー・オープンで米ツアー8勝目を挙げた松山英樹。パットが冴えわたり、プレーオフを制する圧巻の逆転勝利だった
それならば、なぜ今週の松山のパットは、それほど冴えたのか。
その答えは、松山自身が「不思議」と言うぐらいだから、誰にもわかるはずはない。しかし、積み重ねてきた練習の成果や努力の賜物は、あるとき、何かの形になって表れるものであり、表れるきっかけになるものは、往々にしてメンタル面にある。
幼いころから夢見てきたマスターズで勝ち、日本のファンの目の前でZOZOチャンピオンシップに勝った昨年は、それまで表情を強張らせながら孤軍奮闘していた松山が、周囲の力を肌で感じ取った1年だった。
どこまでも心技体を磨き、最高の状態に極限まで近づかなければ勝利はないと常々言っていた松山が、たとえゴルフが不調でも、たとえ何かが足りないと感じていても、チームやファンの支えがあれば、それがエクストラのパワーになることを痛感した1年だった。
「日本のみなさんの応援のおかげで勝つことができた」
ZOZOチャンピオンシップでそう語った松山が、それまで以上に大きく見えたことが、今、再び鮮明に思い出される。
今週のソニー・オープンでは、ハワイ在住の日本人や日系人のギャラリーも多く、その応援は大きな力になったのではないだろうか。
そして、金谷拓実や中島といった日本の後輩たちの手本となって彼らをリードしていく責任や自覚、あるいは、メジャーチャンプである松山でさえ感じるであろう彼らに負けるものかという対抗心が、松山のさらなるパワーになっていたのではないだろうか。
もっと言えば、1983年の青木功によるハワイアン・オープン優勝以来、丸山茂樹や今田竜二、そして松山へ、小平智へと引き継がれてきた日本人による米ツアー優勝の歴史も、松山のバックボーンとなって彼を支えてきたのではないだろうか。
すべてが重なり合って実った圧巻の逆転勝利。松山の米ツアー8勝目は、そんな優勝だった。