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「不思議な感じ」松山英樹のパットはなぜ冴えたのか? ハワイでの逆転勝利を引き寄せた“エクストラのパワー”《米ツアー8勝目》
posted2022/01/18 06:01
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Getty Images
松山英樹が新年2戦目のソニー・オープンを制し、米ツアー通算8勝目を挙げた。
サドンデス・プレーオフ1ホール目で米国のラッセル・ヘンリーを下した松山の勝利は、2位以下を大差で引き離す圧勝ではなかったが、「見事」の一言に尽きる圧巻の勝ち方だった。
そして、目前だった大会2勝目を松山に逆転で奪われたヘンリーの負け方は、もちろん惨敗ではなかったが、完敗だった。ハワイのワイアラエCCで繰り広げられたサンデー・アフタヌーンの2人の戦いは、そんな優勝争いだった。
勝利への勢いが漲ったドライバーショット
最終日を首位で迎えたのはヘンリーで、松山は2打差の2位でティオフ。そして、一気にチャージをかけたのはヘンリーだった。
6番から3連続バーディ、9番ではイーグルを奪ったヘンリーは、通算24アンダーとスコアを伸ばし、一方の松山は通算19アンダーで後半へ折り返した。ハーフターンで5打差が付いていた展開を見たとき、松山の優勝を想像した人は多くはなかったかもしれない。しかし、本当の勝負は、むしろ、そこから先だった。
10番のバーディーで差を4打に縮めると、11番は松山バーディー、ヘンリーがボギーで一気に2打差へ縮まった。松山の15番のバーディーで2人は1打差へ。
そして72ホール目。松山は左サイドに立ち並ぶ背の高いパームツリーをぎりぎり交わすアグレッシブなドライバーショットでフェアウエイを捉えた。あのショットには勝利への勢いが漲っていた。
しかし、まだ追いかける身でありながら、そのとき松山は明るい笑みを覗かせた。そこに彼の心の余裕が感じられ、その笑顔は彼の勝利を予感させた。
技術で攻めながら、自分のゴルフを失わないよう心で態勢を固めていた松山。そんな「攻」と「守」の絶妙なコンビネーションは、あまりにも見事だった。
一方、ヘンリーのティショットは右サイドのフェアウエイバンカーにつかまった。2オンした松山がバーディーパットを沈めると、3打目でピン2メートルを捉えたヘンリーはバーディーパットを沈められず、サドンデス・プレーオフへ突入。
ヘンリーの心の乱れが彼のゴルフを乱したことは誰の目にも明らかで、逆に言えば、ヘンリーを揺さぶりながら堂々バーディーを奪い、最後の最後に追いついた松山の追撃は誰の目から見ても素晴らしかった。