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ナダル「接種すればいいだけのこと」…大騒動化してもなぜジョコビッチはワクチン接種を拒否し続けるのか?〈5つの違反疑惑まで〉
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2022/01/14 17:30
全豪オープン出場予定の前年度チャンピオン・ジョコビッチがオーストラリア入国を拒否された問題。事態は各方面に飛び火してまだ収まる気配がない
ジョコビッチは声明を出して釈明。14日に見に行ったバスケットボールの試合でクラスターが発生したため、16日に簡易抗原検査を受けたところ陰性だったが、念のためにPCR検査を同日に実施し、翌日のイベントに参加したあとに検査が陽性だったことを知らされたという内容。この件に関しては、ジョコビッチが拘束状態にあるときに解放を要求していたセルビアのアナ・ブルナビッチ首相も、「自主隔離の義務を怠っており、国内のルールにも違反する」と激怒しているという。
その3)陽性判定の翌日にインタビュー取材に対応
前日のイベントは「陽性結果をまだ知らされていなかった」と釈明したが、結果を知った翌日の18日にもフランス『レキップ』紙のインタビューを受けていた。「前々から約束していたインタビューで、記者をがっかりさせたくなかったために受けてしまった。しかし、ソーシャルディスタンスをとり、写真撮影時以外はマスクを着用していた」と弁明。
その4)オーストラリア入国の際の虚偽申告
入国書類で「過去14日間にどこにも旅行をしていない」という項目にチェックを記入していたことが判明。しかし実際は、セルビアからスペインに移動していた。スペインのマルベーリャにはジョコビッチが世界中に数々保有する邸宅の一つがあり、そこで3日間ほど調整してオーストラリアに向かったものと思われる。虚偽の書類を提出したことに関しては、「僕のチームスタッフが記入して提出したもの。単なる人為ミスで意図的なものではない」と釈明した。
その5)ワクチン接種が必要なスペインへの違法な入国
スペインに入国するためには、セルビア居住者はワクチン接種の証明書が必要だという。証明書がない場合は、特別な許可を受けなくてはならないが、ジョコビッチはセルビアのスペイン大使館や外務省にその許可を求めていなかったという疑惑が上がった。スペイン政府が調査中である。
ナダルは一言「ワクチンを接種すればいいだけのこと」
こうも次から次へと疑惑が噴出すれば、そもそも本当に感染したのか、ワクチン免除のために感染を偽ったがために、他の行動と辻褄が合わなくなったのではないかという疑いの眼差しまで向けられてもしょうがない。
ラファエル・ナダルは前哨戦を戦ったメルボルンで、「ワクチンを接種すればいいだけのこと。そうすればここでプレーすることに何の問題もない」とコメントした。そう、それだけのことだ。そうしていれば、プレーすることに問題がないばかりでなく、疑惑の数々をほじくり出されることもなかっただろう。
なぜ頑なに「ワクチン接種」を拒否しているのか?
しかし、どうしてもワクチンは接種したくないのだ。それは個人の自由が脅かされる社会への強い反発と、自分の体に起こるかもしれないことへの恐怖のせいだろう。昨年の全米オープンの記者会見でジョコビッチはこう発言している。
「僕たちはみんな、どの大会も満員のファンで埋まってほしいと願っている。でもどうやらそれは不可能らしい。僕はそれを決める専門家ではないし、なぜ観客をスタンドいっぱいに入れられないのかとか、ワクチンによってこの状況が好転するのかといった疑問を議論する立場にもない。ただ、ワクチンに関しては常に、それぞれ自分が打ちたいかどうかという判断が重視されるべきだと考えている。そこだけは崩さないでほしい」