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ナダル「接種すればいいだけのこと」…大騒動化してもなぜジョコビッチはワクチン接種を拒否し続けるのか?〈5つの違反疑惑まで〉
posted2022/01/14 17:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
全豪オープンでは選手もワクチン接種が入国の条件になる。
昨年の11月に主催者のオーストラリア・テニス協会がこのことを正式に発表してから、必ず一悶着あることは想像ができた。王者ノバク・ジョコビッチがワクチン接種の義務化に誰よりも大声で異を唱えていたことを、テニス界で知らない人はいなかった。しかし決定に関しては意外にもさほど騒ぎ立てないジョコビッチに対して、さまざまな憶測が飛び交っていたものだ。ひょっとすると実はもう打ったのか、素直にこれから打つつもりなのか、それとも全豪オープンはあきらめるのか、免除される医学的理由があるのか、抜け道があることを知っているのか――。
ほとんど何も確証のない状態は年が明けても続いたが、そこへ突然ジョコビッチ本人がSNSで「ワクチン免除の許可が出たのでこれからオーストラリアに向かう」というメッセージを投稿した。空港で撮られた笑顔の写真とともに。世間はざわつき、「特別扱いだ」と騒ぐ人々もいたが、ここまで事態がこじれ、これほど疑惑が持ち上がるとは予想もしなかった。ことの発端は何であったかも忘れるほどだ。ここで一度、この10日ほどの間にジョコビッチが犯したとされるルール違反と疑惑を整理したい。
問題になっている“5つのルール違反疑惑”
その1)ワクチン接種免除の書類不備
メルボルンの空港でジョコビッチが提示した免除理由は「過去に感染歴があるから」。一昨年の6月に自身が主催したトーナメントで本人を含むクラスターが発生して大批判を浴びたことは有名だが、それではなく、昨年の12月16日に再び感染していたという。
ジョコビッチの弁護士によると、オーストラリア・テニス協会は予防接種をしていない選手たちに対して「過去6カ月以内に新型コロナ感染歴があれば免除を得られる」と助言し、ジョコビッチの免除証明はビクトリア州政府の承認を得ており、隔離不要の入国が約束されていたとのこと。しかし、これが一転、免除理由にはならないとしてジョコビッチは空港で入国を拒否され、そのまま入管収容所となっているホテルに収容され、裁判に訴えたジョコビッチが勝訴するまでの5日間、拘束状態にあった。協会・州政府・国との主張の食い違いの原因は不明のままだ。
その2)12月17日にイベントに参加しているが…
12月16日にコロナ感染していたというジョコビッチだが、その翌日の12月17日にテニスのジュニアイベントに参加し、子供たちに賞を授与していた。