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格闘技PRESSBACK NUMBER
大山倍達の「一撃」継承なるか “ブラックパンサー”ベイノアが念願の大晦日RIZIN参戦、狙うは「極真空手の異種格闘技戦」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF
posted2021/12/28 17:04
格闘家兼お笑い芸人という異色のキャラクターで注目される“ブラックパンサー”ベイノア。そんな彼にもゴッドハンド大山倍達の「極真イズム」はしっかりと受け継がれている
11月20日、沖縄で行なわれたロクク・ダリとの一戦は壮絶を極めた。パワーで勝るダリは大振りのフックをブンブン振り回してくる。左フックをヒットさせ、ベイノアからスリップダウンを奪う場面も。ダリのベースは柔道で、MMAファイターとしての実績もある。たとえ空振っても、「組んだら、大丈夫」という安心感があったのかもしれない。
3R途中までベイノアはずっと劣勢だった。1Rから内股へのローキック──インローをコツコツと当ててはいたものの、試合の流れはダリが握っていた。
MMA2戦目も黒星か……。
誰もがそう思った刹那、ベイノアはダリのヒザ蹴りをブロックするや、起死回生の右フックをヒットさせ、逆転KO勝ち。現地の駐屯地に在留するアメリカ人の観客から、やんやの大歓声を浴びた。
「ヘタしたら殺される」極真空手で鍛えた精神力
まさに一撃必殺。試合前からベイノアは「一撃で倒す」と公言していたが、それは彼が幼少の頃に初めて出会った格闘技・極真空手の創始者・大山倍達氏が好んで口にした「一撃」と重なり合う。12月9日の会見後、ベイノアは「デビュー戦同様、ダリ戦もわけがわからないうちに終わっていた」と振り返った。
「対戦相手の対策は事前に立てていたけど、試合になったら考える余裕もなく必死に本能のまま動くしかなかった。いまだに夢見心地です」
なぜ窮地に追い込まれながら、一撃で試合をひっくり返すことができたのか。それは見た目とは裏腹に、ベイノアがこれまで幾多の修羅場を潜り抜けているからにほかならない。ベイノアの基礎を築き上げた極真空手では、「ヘタをしたら殺されるんじゃないか」と思うような怪物級の空手家とも裸拳を合わせてきた。
「そういう相手とトーナメントで1日に何回も闘うことで精神力が鍛えられたことは大きい」
極真空手のトーナメントは勝ち上がるにつれ、全身ボロボロになりながら次の試合に臨まなければいけない。それが夢とロマンを生む。ベイノアは「極真の大会に出ていたら、途中から本当に満身創痍になる」と思い返す。
「痛めた場所を冷やして感覚を麻痺させて次の試合に臨まなければならない。試合後、血尿が出たことも何度かありました」
次にチャレンジしたキックボクシングでは、デビュー以来12連勝をマーク。12戦目では無敗のままRISEウェルター級王座を奪取した。13戦目、在日ムエタイ戦士の中で最強の呼び声が高いタップロン・ハーデスワークアウトとの一戦で、まさかのKO負けを喫し、初めて辛酸を嘗めた。しかし、半年後に組まれた再戦では見事リベンジを果たしている。