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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
《独占インタビュー》朝倉海が大晦日RIZINで“最強の証明”を誓う理由「勝っても評価が上がらない闘い。だから強くなれた」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakashi Shimizu
posted2021/12/30 17:10
大晦日のRIZIN.33ではバンタム級日本トーナメント準決勝に登場する朝倉海。勝てばメインイベントで決勝が待っている
「リングに上がったら、誰も助けてくれないですから」
――初戦(準決勝)で当たる瀧澤謙太選手、逆ブロックで扇久保博正選手と当たる井上直樹選手は、海選手を追う新世代と言える存在です。
朝倉 そういう選手が出てきたのは、なんだろうな、嬉しいって言っていいような感覚がありますね。新しい選手が出てくると自分にも刺激になりますし、負けたくないって気持ちにさせてもらえますよね。それに若くて強い選手が出てこないと、格闘技界が続いていかないじゃないですか。
――成功を収めたからこそ「負けたくない」という気持ちを保ち続けるのは大事でしょうね。
朝倉 そこは変わらないですよ、ずっと。自分の根本の部分だと思います。
――結果を出して知名度が上がり、背負うものが大きくなり、稼ぐ額も大きくなる。そうなっても「負けたくない」という気持ちは不変ですか。
朝倉 格闘技ってそういうものだと思います。リングに上がったら1対1。誰も助けてくれないですから。普段どういう生活をしてるか、何を持ってるか、そういうのが関係なくなるのがリングの上なんですよ。単純に勝ったほうが強い、偉い。負けたほうが弱い。それだけの世界なんです。だからいつまでたっても、純粋に負けたくないっていう気持ちは変わらないですね。
――ゴングが鳴ったら、立場みたいなものが入り込む余地はないと。
朝倉 ないですね。
――となると「負けたら評価が下がる」というのも試合中には考えない?
朝倉 試合が始まっちゃえば、そういうことは考えないですね。相手を倒すことに集中するだけです。それに僕は性格がポジティブなほうなので、勝つことしか考えないですね。考えるのは勝った先のビジョンだけです。
――今の状況で言えば、優勝して実力をあらためて示し、世界に挑むという。来年コロナ禍が収まってくれば、日本人選手が海外に出たり、外国人選手が日本に来たりという機会も増えそうです。
朝倉 そうですね。僕の中では、今やってる練習は今回のトーナメントで優勝するためじゃないんですよ。見てるのはその先、世界と闘っていける実力をつけるためなので。
「ベラトールでも全然闘えると思ってます」
――先日のベラトールのバンタム級タイトルマッチ、セルジオ・ペティスvs.堀口恭司はどう見られましたか。優位に試合を進めていた堀口選手が、バックブロー1発で逆転KO負けという衝撃的な結末でした。
朝倉 僕の中では、やっぱり堀口選手の完成度が凄いなと思いましたね。(打撃、テイクダウン、寝技と)トータルで試合を進めることができる。
――トータルで強さを見せて、それでも1発の打撃で負けてしまうことがあるのがMMAの怖さです。
朝倉 本当にそうですよね。怖いです。向こうはその1発を狙ってたんだなとも思いますし。
――来年、ベラトールではバンタム級のトーナメントが開催されます。自分が出ない、同階級の大きなトーナメント。その開催のニュースを聞いて、どう思われましたか。
朝倉 単純に自分も出場したいなというか「もし自分が出ていたら」みたいな目線になりますね。ベラトールの選手の中に入っても、全然闘えると思ってますから。もちろんやってみないと分からないですよ。でも現時点でもしっかり準備してきてますからね、世界と闘うための。《続く》