村田諒太「王者の本棚」BACK NUMBER
『なぜ私だけが苦しむのか――現代のヨブ記』絶望の淵に立たされたとき、自分とどう向き合うべきか。
text by
村田諒太Ryota Murata
photograph bySports Graphic Number
posted2021/12/30 07:00
『なぜ私だけが苦しむのか――現代のヨブ記』H.S.クシュナー著 斎藤武訳 岩波現代文庫 1254円
旧約聖書にある「ヨブ記」をご存知でしょうか。敬虔なヨブが財産、家族を失い、そして皮膚病に襲われて絶望の淵に立たされながらも神への信仰を失わないというストーリーです。
本書の著者、ラビ(ユダヤ教の教師)であるクシュナーさんは、3歳の息子アーロンくんが早老病にかかり、10年ほどしか生きられないと告げられます。
正しく生きているのに、どうして自分の家族が、息子が耐えがたい苦しみを与えられなければならないのか。自己憐憫の日々を送ることになります。
そして息子の死という大きな悲しみを乗り越え、彼は本書を執筆します。1981年にアメリカで刊行されると反響を呼んでベストセラーとなり、世界14カ国において翻訳されているそうです。