濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
〈スターダム〉“永遠のライバル”キッドとAZMがついに激突…王座戦3wayマッチを前にAZM「同じリングにいるだけで楽しい」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/12/17 11:03
11月27日の国立代々木競技場第二体育館大会にて、キッドに挑戦表明をしたAZM
丸め込んで3カウントを奪う「あずみ寿司」、長距離でも的確に決めるダイビング・フットスタンプ、コーナーから飛びながら関節を取る「アメシスト・ストーム」と、フィニッシュ技のパターンも多い。技の受けっぷりのよさには「体が小さいからって相手に遠慮されたくない」という思いがある。専門誌で他団体の男子レスラーから賞賛されたことも。
「褒められると伸びるタイプなのでどんどん褒めてほしい(笑)。今は団体内で褒められるっていうことがほとんどないんですよ。プロレス歴で言ったら自分より上なのは岩谷麻優、朱里の2人だけ。しかも(ユニットが違うので)あまり話さないですから」
プロレスに長く関わる選手、関係者ほどAZMへの評価が高いということなのかもしれない。プロレスファンからは「安定しちゃってる」という声も聞く。ファンから見て分かりやすいのは屈辱から這い上がるドラマであり、成長していく姿なのだ。急激に増えているスターダムの新規ファンの目には、AZMはすでに“出来上がっている”選手として映るのだろう。年齢以上に貫禄があると言ってもいい。
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「安定しちゃってるって、安定してて何が悪いんだって感じですけどね(苦笑)」
AZM「これは今マジで悩んでます」
道場でしっかり練習し、完成させた説得力のある技しか使わない。だからミスをしない。ミスをしないからケガをしないし、相手にもさせない。プロとして当たり前のことをしているだけだと本人は思っている。長く応援してくれるファンからは「いつかスターダムのアイコンに」と期待される。同時に、19歳にして職人肌でもある。AZMにとっては、どちらも嬉しい評価だという。
「職人の要素はあると思います。ハイスピードのベルトを獲ったら、他団体の選手ともどんどんやりたいんですよ。対抗戦で真っ先に乗り込んでいくとか。そこで子供の頃からスターダムにいる“生え抜き”のイメージが活きるし、私も楽しい。他団体の選手と試合すると、いつも以上に“プロレス脳”が働くんですよ。海外でも試合したいですね」
他団体、海外での試合はいつもとは勝手が違う。ファイトスタイルや細かい技術の差もある。それを「スターダムとは違う」と嫌うのではなく「そっちがそう来るなら私はこうやる」と考えるのが楽しい。どんなタイプの選手と闘ってもいい試合にしてみせるというプライドもある。ニックネームの“AZMパイセン”は伊達ではないのだった。
海外に出たい、他団体の選手と闘いたいという気持ちは、リング上の具体的な流れとは違うからマイクを持ってアピールすることではない。SNSでファンに向けてことさらに言ったりもしない。だから「自己主張が薄い」と言われたりもする。職人肌ゆえなのか、ここしばらく試合内容の充実ぶりと話題性が正比例していないように見える。イメージ的に割を食いがちなのかもしれない。「これは今マジで悩んでます」と言った時の表情は、やっぱり19歳なんだよなと思わされた。まだまだ達観はできない。