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オリックス山本由伸23歳、5年前“ドラフト4位”まで他の11球団は指名しなかった…他球団スカウト「当時177cmでちょっと小粒に見えた」
posted2021/12/10 17:05
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
オリックス、山本由伸投手の都城高校当時の姿を見たことはない。
しかし、見に行ったことはある。
あれは確か、山本が高校3年の春だったろう。
宮崎県大会、清武運動公園。2月はオリックスのキャンプ地になる球場だ。
その日、都城高は第2試合だった。前の晩からの雨がまだ残っていて、グラウンドコンディションが良くない中で、第1試合を強行。なんとか試合終了まで持ち込んだところで、雨が強くなった。
観客の多くは、屋根のある場所に避難して雨を避けているが、ネット裏、スカウトたちの集団だけは、徐々に強くなる雨にも、傘をさして座ったまま動かない。
次の試合、都城高・山本の球筋を確かめるために、朝から陣取った大切な「仕事場」なのだ。
試合前のシートノックもできないほど、グラウンドに水が浮いて、「たいへん残念ではございますが……」と、第2試合順延のアナウンスが流れても、スカウトたちが動かない。
「なんだよ~。残念なのは、こっちのほうだよ」
誰かの“泣き”が聞こえて、ようやく帰り支度を始めたスカウトのひとりが、
「明日は見られないんです、他のところで見たい選手いるんで。みんな、そうですよ。この時期、九州じゅうで県大会ですから」
縁がなかったってことじゃないですか……背中でそう言い残して、階段をのぼっていくスカウトたちの足どりの重さが、彼らの無念さをそのまま表している。
5年前のドラフト、山本由伸は4位指名だった
前年の夏、都城高・山本はすでに「150キロ」をクリアしており、九州トップ3とも、四天王とも呼ばれていた。皆、少なからず期待を胸に、このネット裏に集まったはずだった。結局、左わき腹を痛めていたといわれた山本由伸はマウンドに上がらず、スカウトたちも、その成長ぶりを確認できないまま、最後の夏も、県予選の2戦目で早々に敗れた。
そんな巡り合わせが、ドラフト候補としての彼の存在感に関わっていたのかもしれない。
2016年のドラフトは4位指名だった。