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「理想のアスリートはイチローさん」来季45歳の佐藤琢磨が“インディ500優勝請負人”として衝撃的速度のチームに移籍表明
posted2021/12/10 17:00
text by
松本浩明Hiroaki Matsumoto
photograph by
Hiroaki Matsumoto
12月9日、佐藤琢磨はオンラインを通して来季のインディカーシリーズの体制発表を行い、2022年はデイル・コイン・レーシング(DCR) with リック・ウエア・レーシングに移籍し、13年目のシーズンに臨むことを表明した。
インディカーシリーズで5チーム目となる移籍だが、来年45歳という年齢にもかかわらず、レースに対する衰えないモチベーションがオンラインの画面からも感じられた。
「最終戦が終わってから、体制の発表まで時間が経ってしまいましたが、来季に向けて複数のチームと話を続けていました。その中でデイルと話をして、彼のインディ500を勝ちたいという熱意に強く惹かれ、共感しました。DCRは今季もロマン・グロージャンを擁してロード、ストリートコースで素晴らしい速さを見せていましたし、インディ500でも予選スピードには衝撃に近いものがありました。今から彼らと一緒に仕事をするのが楽しみです」
今年はポールポジションがなく、表彰台にも上がれなかったことから、琢磨の去就に注目が集まっていたが、アメリカでは大方の日本人が考える以上にインディ500チャンピオンの価値は高い。それを2回成し遂げた琢磨が移籍に向け複数のチームと話を続けてきた事実からも、インディカーチームがどれほどインディ500勝利のノウハウを欲していたかがわかる。それを最も渇望していた人物がデイル・コインだったということだろう。
衰え知らずの肉体と闘志
琢磨は来季開幕を45歳で迎える。F1のキミ・ライコネン(42歳)、MotoGPのバレンティーノ・ロッシ(42歳)、そして後輩でもある中嶋一貴(36歳)でさえも、今季限りで一線を退くことを決めた。アスリートにとって何人にも“引退”は抗えない問題だ。ことにモータースポーツとなれば、その理由は体力の衰えだけでなく、財政上の理由や政治的な理由も絡んでくる。
しかし琢磨はすでにF1で6年半、インディカーで12年のキャリアを積んだ。ここまで長いレースキャリアは世界のレースドライバーに照らしても珍しい。そしてその間、レースに対するモチベーションとフィジカルコンディションを維持し続けたことは特筆に値する。