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タイガー・ウッズ「事故現場のあの道は、まだ通れない」切断も検討した右足とゴルフは順調回復、気がかりは“心の深い傷”
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2021/12/07 06:01
ホストを務めた「ヒーロー・ワールドチャレンジ」で公の舞台に姿を見せたタイガー・ウッズ。練習場ではドライバーショットも披露するほど回復している
自身が大会ホストを務めるヒーロー・ワールドチャレンジ(12月2日~5日)では、開幕前の火曜日に、事故後、初となる会見が予定されていた。だが、その前日、米ゴルフダイジェスト誌はウッズの単独インタビューを公開。
そして30日、バハマのアルバニーGCで会見が行なわれ、ウッズは笑顔を輝かせながら、心境や展望を赤裸々に語った。
水曜日には練習場でフルスイングしながらフェアウエイウッドを打ち、金曜日にはウエッジ、土曜日にはドライバーショットも披露した。
「飛ばないけど、パワーはないけど、ドライバーを振ることができる。バッグの中のどのクラブも打てる」
右足や身体のどこかをかばったり、痛みを感じたりしている様子はない。ほぼフルスピードで、スムーズにフルスイングするウッズの姿は、順調な回復を物語っていた。
しかし、そこに至るまでは想像を絶するほど「長く厳しい道程だった」とウッズは振り返った。
右足切断も検討されたほどの事故
ロサンゼルス郊外の事故現場から市内の病院へ緊急搬送された当初は「右足切断が実際に検討されていた」と、ウッズは会見で初めて明かした。
右足喪失の危機は医師団の尽力によって回避されたが、フロリダの自宅に戻ってからも「3カ月間は右足を動かすことはできず、とにかく外に出ることが目標だった」。
ようやく屋外に出たときは「ただただ太陽の光を感じた」。
車椅子から立ち上がり、なんとか松葉杖になったとき、試しに裏庭の練習グリーンでパットしてみたそうだ。
「右足はギブスのブーツを履いていて、うまくパットできないことに気が付いた」
ようやくギブスが外され、それなりにパットすることができるようになると、カップに沈めたボールを(足を曲げ、体をかがめて)拾い上げることができないことに気付いた。
「だから、今度はカップをすべて砂で埋めてもらった」
そうやって、パットの次はチップへ、チップの次はショットへと、一歩一歩、前進してきたが、「パットやチップのフィーリングがやっとのことで戻ると、ついでに痛みも戻るという具合で、練習とアイシングの繰り返しだった」。
辛抱強さが求められるスローな前進だった。しかし、ウッズの肉体とゴルフは、着実に一歩ずつ、回復と前進を続けている。