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タイガー・ウッズ「事故現場のあの道は、まだ通れない」切断も検討した右足とゴルフは順調回復、気がかりは“心の深い傷” 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byGetty Images

posted2021/12/07 06:01

タイガー・ウッズ「事故現場のあの道は、まだ通れない」切断も検討した右足とゴルフは順調回復、気がかりは“心の深い傷”<Number Web> photograph by Getty Images

ホストを務めた「ヒーロー・ワールドチャレンジ」で公の舞台に姿を見せたタイガー・ウッズ。練習場ではドライバーショットも披露するほど回復している

 一番気がかりなのは、ウッズの心の傷の回復だ。緊急搬送され、緊急手術を受けてからしばらくの間は、自身に関する周囲の喧騒や憶測、知りたくない情報をシャットアウトしたい一心で「スマホは持たないようにしていた。(病室に)テレビはあったけど、スポーツだけを観戦していた。ローカル・チャンネルやローカル・ニュースは一切見なかった」。

 ウッズの事故現場は、ロサンゼルス郊外の高級住宅街パロスベルデスを南北に走るホーソーン・ブルーバードという道路だった。

「あの道は、まだ通りたくないし、通れない。精神的に、僕はあの道をまだ通ることができない。身体のあちらこちらにたくさん傷を負ったあの事故、あの道のことを思い出すだけで心身が痛む。そうなることに今は耐えられない」

 恐怖や激痛がフラッシュバックするということなのだろう。ウッズが心に負った傷が癒えるまでには、まだまだ時間がかかりそうだが、そうやって自身の心の状態を冷静に見つめ、分析できていることは、それだけでもスゴイこと、強いことなのではないだろうか。

「フルタイム参戦はもう決してない」

 心の現実から逃げずに向き合い、その上で、ウッズは自分ができること、やるべきことに優先順位を付けながら取り組もうとしている。

 2017年4月に4度目の腰の手術を受け、辛いリハビリ生活を経て戦線復帰し、2018年秋のツアー選手権、2019年春のマスターズ、同年秋のZOZOチャンピオンシップを制覇して復活したウッズは「あのとき僕は一度はマウント・エベレストに登ったんだ」と登山に例えた。

「でも今、もう一度、エベレストに登れるだけの心身が僕にあるとは思えない。フルタイムでツアーに参戦することは、もう決してない。不幸な現実だけど、それが僕の現実。僕はそれを受け入れる」

 だからと言って、戦うことを諦めたわけでは決してない。

「かつてのベン・ホーガンがそうだったように、僕も年間に数試合を選んで出場し、戦うことはできる」

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