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マラソン界最速カップルが結婚 鈴木健吾&一山麻緒「きっかけは“敗北のMGC”」2人の知られざる共通点とは 

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酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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photograph byTakuya Sugiyama/AFLO

posted2021/12/06 11:03

マラソン界最速カップルが結婚 鈴木健吾&一山麻緒「きっかけは“敗北のMGC”」2人の知られざる共通点とは<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/AFLO

12月1日、男子マラソン日本記録保持者の鈴木健吾(富士通)が女子マラソン単独アジア記録を持つ一山麻緒(ワコール)と結婚したことを発表した

 大学4年時は右股関節を痛めた影響で目標にしていたユニバーシアードのハーフマラソンは3位に終わり、10月の出雲駅伝を欠場した。それでも全日本大学駅伝は最終8区でトップ東海大との17秒差を悠々と大逆転して、チームに20年ぶりの栄冠をもたらした。日本人選手では歴代2位の57分24秒で走破している。

 最後の箱根は東京マラソンの出場を視野に入れながらトレーニングに励んだ。2年連続の区間賞は逃したが、1時間7分26秒の区間4位でまとめている。そして2月の東京マラソンで学生歴代7位(当時)の2時間10分21秒をマークした。

 富士通入社後は大腿骨を疲労骨折するなど故障が相次ぎ、思うようにレースに出られなかった。それでも入社2年目(19年)の4月にハンブルクマラソンで2時間11分36秒をマーク。「ワイルドカード」(対象2大会の平均が2時間11分00秒以内)でMGCの出場権を獲得している。同じ頃、一山もヨーロッパにいた。

“福士路線”に乗った一山麻緒

 一山も出水中央高時代は全国的には無名だった。3000mの自己ベストは9分26秒13。インターハイは1500mと3000mで出場しているが、予選落ちだった。高校卒業後、ワコールに入社してメキメキと力をつけていく。大後監督と同じく、永山忠幸監督も中長期的なビジョンを描いていた。

 社会人1年目(16年)の5月に5000mで15分44秒33の自己ベスト。「これまでの指導経験のなかで、福士加代子と比べても近いところに来ている。福士の路線で行けるのかなという手ごたえをつかみました」と永山監督は一山の可能性を感じていた。

 期待の高卒ルーキーは11月の全日本実業団女子駅伝1区で区間記録を20秒塗り替えて区間賞を獲得。12月に10000mを32分15秒73で走ると、翌年2月のクロカン日本選手権シニア8kmで優勝した。

 2017年3月に初めて一山を取材したときに、「2020年東京五輪ではマラソンで勝負していきたいと思っています」と話していたのが強く印象に残っている。当時19歳だった一山の言葉は本物だったのだ。

 入社2年目(17年)の日本選手権は5000mと10000mで4位。ロンドン世界選手権を逃すなど、トラックでは福士ほどのインパクトを残すことができなかった。しかし、一山は早くからマラソンで勝負することを決めており、2019年3月の東京で初マラソンに挑戦した。

 冷雨の悪条件で2時間24分33秒をマークしたが、33秒差でMGCの出場権には届かなかった。それでも2カ月後のロンドンマラソンに強行出場。2時間27分27秒でゴールして、「ワイルドカード」(期間内の上位2記録平均が女子2時間28分以内)でのMGC出場資格を手にした。

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