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マラソン界最速カップルが結婚 鈴木健吾&一山麻緒「きっかけは“敗北のMGC”」2人の知られざる共通点とは
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byTakuya Sugiyama/AFLO
posted2021/12/06 11:03
12月1日、男子マラソン日本記録保持者の鈴木健吾(富士通)が女子マラソン単独アジア記録を持つ一山麻緒(ワコール)と結婚したことを発表した
“出会い”のMGCは鈴木が7位、一山が6位
鈴木と一山は「ワイルドカード」でMGCの出場権をつかんだものの、2019年9月15日のレースでは東京五輪代表を確保することができなかった。
鈴木は20km手前で揺さぶりをかけて、2位集団を4人に絞るも、終盤のペースアップに対応できない。2位の服部勇馬(トヨタ自動車)と1分08秒差の7位(2時間12分44秒)に終わった。最年少22歳で出場した一山も5km16分31秒、10km33分34秒というハイペースに持ち込んだが、13km以降は失速。2位の鈴木亜由子(日本郵政グループ)と3分28秒差の6位(2時間32分30秒)に沈んだ。
このMGCの敗北がふたりの若者にどのような影響を与えたのだろうか。
鈴木はMGCファイナルチャレンジの対象である2020年3月8日のびわ湖毎日マラソンに、一山は同日の名古屋ウィメンズマラソンに出場した。スタート時間はびわ湖が9時15分、名古屋が9時10分だった。
鈴木は日本人選手のなかで最後まで外国勢に食らいついた。しかし、33km手前で脱落すると、2時間10分37秒の12位でレースを終えた。
一方の一山は雨のなかで29km付近にアタックする。後続を一気に引き離して独走。日本歴代4位、女子単独レースではアジア記録となる2時間20分29秒で制して、東京五輪の“ラストシンデレラ”になった。
一山はこのとき米国・アルバカーキで約4週間の高地トレーニングを積んでいたが、鈴木もほぼ同時期にアルバカーキで合宿をしていたという。同日のレースでは明暗をわけたが、一山の激走がパートナーになる鈴木を奮い立たせたに違いない。
鈴木は今年2月のびわ湖毎日マラソンで信じられないパフォーマンスを発揮する。36km付近で飛び出すと、ラスト5kmを14分23秒という日本人では異次元のスピードで突っ走ったのだ。一山が名古屋ウィメンズで見せた以上の強烈なラストスパートで、2時間4分56秒の日本新記録を打ち立てた。
「こんなタイムが出るとは思わなかったので、正直自分が一番ビックリしています。東京五輪の代表にはなれなかったですけど、しっかり気持ちを切り替えてパリ五輪を見据えてコツコツやっていきたいと思います」(鈴木)
そして鈴木の日本記録がパートナーになる一山に勇気を与えたことだろう。