韓国3年目のシーズンが終わってみると、2部とはいえKリーグを代表するFWとして成長し、その嗅覚はさらに研ぎ澄まされた。

「ペナルティエリア内での一瞬の判断はすごくよくなったと思います。この場面でどっちを選ぶのか、ボールがどっちにこぼれてくるか、クロスがどこに上がってくるのかという一瞬の判断は、積み重ねてきた経験で、より可能性の高いほうを選べるようになったと思います」

　そして忘れてならないのは、彼が東京生まれ、東京育ちの在日コリアンで、Jリーグでプロデビューを果たした選手だということだ。ルーツは祖父が生まれた韓国にあるが、彼のサッカースタイルの基盤は日本で培われた。「日本では優れたFWが生まれにくい」とよく聞くが、海外リーグでこの得点能力の高さは、もっと日本でも評価されてもいいと思う。

川崎フロンターレ時代、後列右から2番目が安（2014年）©AFLO

　それに彼は北朝鮮代表FWでもある。コロナ禍の影響でカタールW杯アジア2次予選を辞退した北朝鮮だが、そのプレーを日本のファンに見せられない残念さはある。

　だからか「韓国で周囲からは冗談で韓国代表FWになってほしいという声もあります」と笑っていたが、韓国サッカーファンからすれば、安の得点力は魅力的だろう。

　この先に見据えるのはもちろん「1部でプレーすること」。今はKリーグに残るのが有力だが、もちろんJリーグという選択肢がなくなったわけではない。

「釜山に残るか、違うチームに行くかはまだ決まっていませんが、どのチームにいても得点を決めてチームに貢献すること。自分のやることに変わりはありません」

　サッカーができるありがたみを噛みしめ、安はこれからもゴールで自分の存在価値を示していく。

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