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絶対的ピンチでなぜ菅野智之と坂本勇人は“笑った”のか? 巨人・原監督があえて「代打の神様」と満塁で勝負した本当の理由 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph bySankei Shimbun

posted2021/12/03 17:06

絶対的ピンチでなぜ菅野智之と坂本勇人は“笑った”のか? 巨人・原監督があえて「代打の神様」と満塁で勝負した本当の理由<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

ヤクルトとのクライマックスシリーズ、ファイナルステージ2回戦の6回、自らマウンドに行き菅野らに作戦を伝えた巨人・原監督

菅野と坂本が見せた笑顔の意味とは?

 原監督にしてみれば、シリーズの命運をかけるにふさわしい役者も揃っていた。おそらく菅野でなければこの選択はなかっただろう。しかしもし自分たちが主導権をとって動き、ヤクルトがそれに応じて動くなら──高橋に代打の川端を送ってきて、その上で2死満塁を菅野が抑えて0点で切り抜ければ……。危険な賭けは百も承知だが、シリーズを勝つためにここで勝負をかける。勝負に勝てば、ヤクルトに翻弄されるシリーズの流れをも、一気に変えることができるかもしれないということだった。

 その意図は選手たち、特にマウンドの菅野やキャプテンの坂本勇人もわかっていたはずだ。

「監督、すげえ勝負を決断したな!」

 原監督がベンチに引き上げた直後に見せた二人の笑顔の意味は、そうとしかとれなかった。一流選手が、この場面でマイナスな意味で表情を変えることは多分、ないはずだと思うからだ。言葉が正しいかどうかはわからないが、ゾクゾクとした。この勝負の持つ意味がわかっているからこそ、ヒリヒリするような場面を思ったからこそ笑みが溢れた。

 イチローさんや松井秀喜さんも、土壇場になればなるほど、一瞬、柔和な表情になったり、時には笑みが溢れる。そんな姿を見てきたから、あの場面での2人の笑みもそう思うとしか言いようがない。

 これが原監督のコメントから読み取れる、あの満塁策の背景だったと考える。

高津監督も狙いは分かった上で、あえて乗っかった

 そしてもちろんヤクルトの高津監督も、そんな原監督の狙いは分かった上で、あえてその策に乗っかったのだとも思う。

 なぜならそれだけ川端は、高津監督にとって絶対的な切り札だからである。巨人ベンチの狙いを読み切り、だからこそあえてここで潰せば一気にシリーズの行方は決することができる。

 それくらいの覚悟で切り札を切ったはずだ。

 そして川端がその期待に応えた。

2人の監督のシリーズの行方をかけた見えない攻防

 すべてはフルカウントから菅野が投じた外角のカットボールを、川端がファウルで逃げた1球に凝縮されていた。

 あえて左打者の外角にカットボールを投げる菅野の投球術。それをギリギリでカットしてファウルで逃げる川端のバットコントロールの凄さ。その対決の背景には、2人の監督のシリーズの行方をかけた見えない攻防もあったと思う。

 結果的にこの満塁策は勝負に敗れたことで失敗と烙印を押され、批判されても仕方ないだろう。

 ただ勝負の深淵はそんなに浅くはない。

「無謀な策」とひとことで片付けるのは、野球ファンにとってはあまりにつまらないではないか──。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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