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「大谷のおかげで人生が変わった」エンゼルスと入団合意した“もう一人の二刀流”ロレンゼンが語った“大谷翔平への感謝”
text by
ブラッド・レフトンBrad Lefton
photograph byGetty Images
posted2021/12/06 06:00
大谷も所属するエンゼルスとの入団合意に達成したと報道された、“二刀流”のロレンゼン
「僕は大谷にとても感謝しているんだ」
結果的に、要望を断るわけにもいかずチームに協力したが、大谷はエンゼルスに入団することになった。ただ'18年、1年目の大谷が二刀流として目覚ましい活躍をすると、その影響はシンシナティにも及んだ。
そして、この年の8月13日、ロレンゼンは夢を叶える。9回表から右翼手としてメジャーで初めて守備につくと、その裏に打席に立ち、センター前ヒットを放ったのだ。それは、「アメリカ製」の二刀流が誕生した瞬間でもあった。翌年にはさらに飛躍を遂げ、中継ぎとして83.1回に登板しながら、外野手として89イニングプレーし、9試合で外野手と投手を試合中に兼任した。
「僕は大谷にとても感謝しているんだ。彼が二刀流という夢を貫いて努力してきたおかげで、道が拓けた。大谷がいなければ、レッズが僕に二刀流のチャンスを与えることはなかっただろう」
「大谷は、これから何があっても二刀流を続けていくべきだ」
そして、二刀流は二刀流にしかわからないことがある。
「大谷はチームの全体打撃練習にはあまり参加しないと聞いているけど、よくわかる。両方をやるためには、実はどちらのトレーニングもやりすぎてはダメなんだ。つまり、日々の過ごし方をシンプルにするということだね。投手として肩と肘のケアを大事にしないといけないのはもちろんだけど、僕は基本的に、投打両方ともやる場合は、どちらかに特化した練習ではなくて、アスリートとしてのトレーニングに重点を置いた方が効率的だと考えている。両方をトレーニングするには時間が足りない、ということもあるけど、そもそもグラウンドでのパフォーマンスは身体能力に任せればいいんだ。大谷は究極のアスリートだから、二刀流をハイレベルで実現しているよね」
二刀流は怪我のリスクを理由に反対されたり、警戒されがちだ。まさに今季、ロレンゼンはそれに直面している。7月17日の試合に中継ぎとして出場したロレンゼンは、その後外野手として延長11回まで出場を続けたが、試合中に足の肉離れを起こしてしまい、登録抹消となったのだ。すぐに復帰できたものの、レッズは怪我を警戒して、その後、打者としては出場していない。
「怪我したらすぐに『やめたほうがいい、どちらかに集中すればいい』という批判が起きるけど、『ノー、違うよ』と僕は言いたい。怪我は野球選手である以上、仕方がない。大谷は怪我を克服して今年、活躍した。だからこそ大谷は、これから何があっても二刀流を続けていくべきだと思うし、僕もそうありたいと思っている」
大谷だけでなく、ロレンゼンもまた、二刀流に立ちはだかる常識という壁を乗り越えるべく、必死で戦っている。