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「落合さんの技術を盗みたい」「彼ほど誤解されている人もいない」立浪和義が憧れ、三冠王バースと王貞治が称えた落合博満の《天才性》
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
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posted2021/12/01 17:06
落合博満の究極の打撃論には、多くの野球人が驚嘆している
落合くんの発言は、どうも真意が伝えられていない
<名言3>
落合くんの発言は、どうも真意が伝えられていないようなんだな。彼ほど誤解されているひともいないんじゃないかな。
(王貞治/Number163号 1987年1月6日発売)
◇解説◇
80年以上の歴史を持つ日本プロ野球の中で、三冠王はわずか7人しかいない。その中で複数回三冠王を経験したのはバース、王、落合の3人のみだ。その王と落合の三冠王・特別対談が1986年のシーズンオフに実現した。
大打者同士の打撃論は非常に精緻かつ、常人ではたどり着けないレベルの言葉の数々が並ぶが……興味深いのは練習についての見解だ。
現役時代の王は荒川博打撃コーチのもと、いわゆる「荒川道場」で年中休みなくバットを振り、部屋の中で真剣を振ったとの伝説も持つ。一方で落合はメディアによる《練習嫌い》のイメージが先行していた。
対照的な2人というイメージだが、王は落合に対して理解を示していた。
「キャンプのときにも、いろいろ言われるでしょう。『落合は練習をしない』とか。でも、プロの練習って、みんなが同じじゃないんだしね。でも、面白いよね、日本じゃみんなが同じことをしていないと、どうも納得しないんだよな」
落合は練習をほぼ非公開にしていた。しかし当時のチームメイトは「真正面から来た硬球を打ち返す」というメニューに驚嘆していたという。それだけでない。落合自身は恐るべき意識を持ってゲーム前の打撃練習に臨んでいた。
「まず順番にレフト・センター・ライト、レフト・センター・ライト、左中間・右中間、三塁線のフェア・ファウルと、『打て』と言われて、何人がちゃんと打てるかな? オレ、『打て』って言われたら打ってみせるよ。そういう練習してきたから」
誰にも追いつけない技を磨いてきたからこその自負。王もそれを分かっているからこそ、「オレ流」の打撃を認めたのだろう。
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