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“10年に一度の挑戦”ウオッカが成し遂げた「64年ぶり戦後初、牝馬の日本ダービー制覇」はどれほどスゴいのか? 

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横山オウキ

横山オウキOki Yokoyama

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photograph byフォトチェスナット

posted2021/12/03 11:03

“10年に一度の挑戦”ウオッカが成し遂げた「64年ぶり戦後初、牝馬の日本ダービー制覇」はどれほどスゴいのか?<Number Web> photograph by フォトチェスナット

スタンドに大歓声が沸き起こった牝馬のダービー制覇。人馬はこの後、皇太子殿下に敬礼した

 道中3番手でレースを進めたダイワスカーレットがウオッカにリベンジを果たしたのだ。ウオッカは2着になり、デビュー以来2敗目を喫する。しかも単なる取りこぼしではなく、真正面からの敗北。桜花賞で勝利しダービーへ乗り込むことを目論んでいた陣営にとって、大きな誤算とも言える黒星だった。

 しかし、ウオッカ陣営は、それでもダービーへの挑戦を決定。牡馬に挑戦する道を歩むこととなった。

64年ぶり偉業に挑戦するも「3番人気(単勝10.5倍)」

 平成でダービーに挑戦した牝馬は3頭。95年の3歳(旧表記)女王・ビワハイジ。06年の2歳女王・ウオッカ。13年の2歳女王・レッドリヴェール。奇しくも3頭とも、一度女王の座につきながらも桜の舞台でライバルに敗れた牝馬だった。まさに10年に1度のレアケース、それが牝馬のダービー挑戦である。事実、ウオッカが制した場合は64年ぶり、戦後初の牝馬のダービー馬誕生という記録もかかっていた。

 ウオッカがダービーに向けて調整している中、ダイワスカーレットが感冒のためオークスへの出走を回避。二強不在で、オークスが開催されることとなった。一方でダービーは皐月賞1~4着馬をはじめ多くの有力馬が集結。5戦4勝(重賞3勝)のフサイチホウオー、皐月賞馬ヴィクトリー、2歳王者ドリームジャーニー。ダービー挑戦馬の先輩であるビワハイジの仔アドマイヤオーラはシンザン記念でライバル・ダイワスカーレットを撃破。世代を代表する強豪馬が、しっかりとダービーへの出走を決めていた。

 1番人気はフサイチホウオー、単勝オッズは1.6倍だった。01年のジャングルポケットから前年06年のメイショウサムソンまで、ダービーでは1番人気が6連勝中。さらに平成に開催されたダービーで単勝1倍台に支持された馬は、トウカイテイオー、ナリタブライアン・ディープインパクト、あとはフサイチホウオーと15年のドゥラメンテのみと、名馬揃いである。対するウオッカは、3番人気(単勝オッズ10.5倍)。ビワハイジが10番人気(単勝オッズ71.8倍)だったことを考えれば期待の高さがうかがえるが、差はつけられていた。

一頭、弾けるように突き抜けた馬がいた

 皇太子殿下と安倍晋三総理が見守る中、ゲートが開いた。レースを引っ張るかと思われた2番人気ヴィクトリーはスタートがうまくいかず、慌てて2コーナーでポジションをあげる。かわりにアサクサキングスがレースを引っ張り、サンツェッペリンが続いた。中団前目にフサイチホウオー、やや離れてウオッカが追走。直線、逃げるアサクサキングスが絶好の手応えでスパートをかける。後続との差は十分。フサイチホウオーは伸びず、ヴィクトリーも一杯に。

 しかし一頭、弾けるように突き抜けた馬がいた。

【次ページ】 ダービー後も続いた挑戦の歴史

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