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《ジャパンC》コントレイルが“初めて負けた”レースから1年越しの悲願へ…3頭の三冠馬が競演した夢の「20年JC」を振り返る
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byKYODO
posted2021/11/27 17:02
2020年のジャパンカップ最後の直線。アーモンドアイ(中央)が抜け出し、コントレイル(左)は2着、デアリングタクト(右)は3着
名馬アーモンドアイにとってはラストラン
この若き三冠馬2頭をさしおいて単勝2.2倍の1番人気に支持されたのがアーモンドアイ。2018年の牝馬三冠馬はその後、ジャパンC、ドバイターフ(GI)、天皇賞・秋(GI)連覇にヴィクトリアマイル(GI)を優勝。日本競走馬史上初となる8つの芝GIを制覇。ラストランとなるこのジャパンCで9個目の勲章を奪取せんとしていた。歴史的名馬を育てた美浦・国枝栄調教師は言う。
「天皇賞・秋連覇の後はノーザンファーム天栄に放牧しました。香港遠征も考えたけどコロナ禍という情勢を考えてターゲットをジャパンCにしました。これがラストランなので皆さんの期待にしっかりと応えたいです」
鞍上は名コンビとなったクリストフ・ルメール騎手だ。
実力馬に有利な「良い流れ」
ゲートが開くとキセキが逃げ、2番手以下を離して最初の1000メートルは57秒9で飛ばした。
3強の中ではアーモンドアイが最も前の位置。キセキからは少し離れたものの5番手を追走した。この右後ろ、7番手で流れに乗ったのがデアリングタクト。コントレイルは更に後ろ。デアリングタクトを視界に捉える9番手という位置だった。
「良い感じで流れている」
隊列を見ながら国枝調教師はそう思っていた。淀みのない流れになるほど底力が要求される。つまりは実力のある馬に有利になるわけで、だからこそ“良い感じで流れている”と思ったのだ。
大きな出入りのないまま直線に向いた各馬だが、そこから先、レースは大きく動いた。
「ルメさん」にとってもスペシャルなレースだった
キセキが一杯になると、代わって進出してきたのが4番人気のグローリーヴェイズ。しかし、そのすぐ後ろに女王アーモンドアイが早くも迫っていた。国枝調教師は手綱を取るルメール騎手を、愛情を込めて「ルメさん」と呼び、言った。
「『早いかな?』と少し心配になったけど、ルメさんの手応えは悪くなかったので『頑張ってくれ!!』と思いました」
こうして3歳三冠馬2頭に先駆けて先輩三冠馬のアーモンドアイが堂々と先頭に立った。内でグローリーヴェイズが上々の粘り腰を見せたが、これに外から伸びて来たのがカレンブーケドールとコントレイル。脚色で優るコントレイルが大外から2番手に上がった。
一方、デアリングタクトの豪脚は不発。最後の最後でなんとか伸びてグローリーヴェイズとカレンブーケドールをかわしたもののギリギリ3着まで上がったところがすでにフィニッシュラインだった。
結果、2分23秒0の時計で勝ったのはアーモンドアイ。1と4分の1馬身遅れの2着がコントレイルで、デアリングタクトは更にクビ遅れての3着だった。
「アーモンドアイに乗る時はいつも特別な気分だけど、今回はラストランなのでいつも以上にスペシャルな気持ちでした」
ルメール騎手はそう言うと、続けた。
「これで9つ目のGI優勝。アーモンドアイは本当に凄い馬です」
この言葉に首肯して同調したのが国枝調教師だ。
「本当に大した馬です。これだけの強敵が揃ったレースでもあっさりと勝ってしまった。こんな素晴らしい馬の面倒を見させてもらって私も幸せでした」