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メルセデスとレッドブルのなりふり構わぬ《場外乱闘》勃発 シーズンは残り2戦、熾烈な駆け引きを制するのはどっちだ?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/11/26 11:00
圧倒的な速さでカタールGPに勝利し、ブラジルGPに続いて2連勝を遂げたハミルトン
メルセデスのプレッシャーはこれだけでは収まらなかった。ブラジルGP決勝でトップのフェルスタッペンと2番手のハミルトンが演じたサイド・バイ・サイドのバトルに関しても、メルセデスはレース2日後にFIAに再審を請求した。
再審を実施するかどうか、カタールGPの開幕前日にメルセデスとレッドブルの代表者とブラジルGPのレース審議委員による話し合いを行い、FIAは翌日、「メルセデスの再審請求を却下する」という判断をくだした。
結果だけを見れば、この再審請求はメルセデスの敗北のように見えるが、じつはそうではない。メルセデスのトト・ウォルフ代表が、「もう一度、検証してもらい、議論してもらうことが最大の目的だった」と言うように、この再審請求も、じつはフェルスタッペンにプレッシャーをかけることが狙いだったと思われる。
駆け引きとレース結果に因果関係はあるか
それはカタールGPを見る限り、功を奏していたように思える。金曜日の夜に行われたドライバーズ・ミーティングでは、ブラジルGPでのフェルスタッペンとハミルトンのバトルについて、FIAのレースディレクターであるマイケル・マシとドライバーたちとの間で激論がかわされたという。このミーティングの内容は原則非公開だが、再審請求が却下されたことに不満を持つ多くのドライバーたちが記者たちの質問に答える形でミーティングの内容が一部漏洩した。
この状況にフェルスタッペンは「僕たちが行うミーティングは、本来メディアに公開される必要はないと思う。僕はそういうことを公にするのは好きではない」 と不快感を露わにした。メルセデスは再審請求を通すことはできなかったが、ドライバーたちを味方につけて、フェルスタッペンを間接的に孤立させることに成功したわけだ。フェルスタッペンが予選で黄旗無視を行い、5番手降格のペナルティを受けたのは、その翌日のことだった。
そして、そのペナルティに対して、フェルスタッペンが所属するレッドブルのホーナー代表が冷静さを欠いた発言を行い、後日戒告処分を受けた。
結局、カタールGPを制したのはハミルトン。ペナルティを受けたフェルスタッペンも2位でフィニッシュし、チャンピオンシップリーダーの座をなんとか守った。シーズンはあと2戦を残すばかり。F1は日曜日のレースだけが戦いではない。レッドブル・ホンダとメルセデスの死力を尽くした攻防は、いまクライマックスに達しようとしている。場外戦も含め、さまざまな駆け引きを制した者が、21年のチャンピオンに輝くはずだ。