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メルセデスとレッドブルのなりふり構わぬ《場外乱闘》勃発 シーズンは残り2戦、熾烈な駆け引きを制するのはどっちだ?
posted2021/11/26 11:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
F1初開催となったカタールGP。日曜日の決勝レーススタート前のグリッド上には、サッカーの元イングランド代表のデイビッド・ベッカムが来賓として訪れていた。カタールは1年後の22年秋に開催されるサッカーのワールドカップのホスト国となっている。ベッカムはそのプロモーションのために招かれていた。
そのベッカムとグリッド上で抱き合って再会を喜んでいたのがレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表だった。ベッカムの妻ビクトリアは90年代後半に世界的大ヒットを飛ばしたイギリスの女性アイドルグループ、スパイス・ガールスの元メンバーで、ホーナーの妻ジェリ・ハリウェルもビクトリアとともにグループを支えたひとりだった。
しかし、ホーナーがベッカムと会い、喜びを爆発させたのにはほかにも理由があった。それはこの2週間、ホーナーはフラストレーションがたまる日々を送っていたからだった。
発端はブラジルGPの予選後だった。国際自動車連盟(FIA)の技術委員が「ルイス・ハミルトン(メルセデス)のリアウイングに規定違反の疑いがある」とレース審議委員会に報告した。すると予選後のパルクフェルメ(車両保管所)でマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がハミルトンのリアウイングを触っていた事実が発覚。メルセデスは「ハミルトンのリアウイングの規定違反はフェルスタッペンによってダメージが与えられたからだ」と主張し、FIAはハミルトンだけでなく、フェルスタッペンも召喚し、事情を聴取することになった。
レギュレーションでは、パルクフェルメの内部へ立ち入りを許されるのは、競技役員のみ。同競技役員あるいは適用される規則による許可がない限り、いかなる作業、検査、調整、または修理も行ってはならないとなっており、フェルスタッペンにはパルクフェルメ違反で約650万円の罰金が科せられた。また、ハミルトンにはリアウイングの規定違反により、予選失格が言い渡された。
前例のない罰金の理由
しかし、ハミルトンの予選失格はともかく、FIAがフェルスタッペンに約650万円もの罰金を科したことにレース関係者は驚きを隠さなかった。というのも、これまでほかのドライバーがパルクフェルメで他チームのマシンを触ってもペナルティを科せられたことはなく、しかも、フェルスタッペンがハミルトンのリアウイングを指で触ったのはわずか数秒だったからだ。
にもかかわらず、フェルスタッペンにペナルティが科せられたという事実からは、FIAに対し、厳格な判断を下すべきというメルセデスからのプレッシャーがあったと推測できる。