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「ぼくも優真みたいに」「佐藤選手は良い存在」鍵山優真18歳と佐藤駿17歳が明かしたライバルへの想い《GPフランス大会でワンツー》
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/11/24 17:01
GPシリーズ・フランス大会にて優勝を果たした鍵山優真(左)と2位の佐藤駿(右)
ところがこのタリン世界ジュニア選手権は、パンデミックで世界中がロックダウンされる前の最後の国際大会になった。筆者がニューヨークの自宅に戻ったわずか数日後、アメリカの国境も欧州に対して閉鎖された。
二人とも、本来ならもっと注目されるはずだった本格的なシニア国際大会デビューだったが、2020/2021年シーズンの前半はほとんどの大会がキャンセルに。それでもNHK杯は国内大会の形式で開催され、鍵山が優勝。全日本選手権でも鍵山は前年に続いて3位に食い込み、初挑戦をしたストックホルム世界選手権で、ネイサン・チェンに次いで2位という快挙を遂げた。
「優真みたいになれるように」「ジャンプは佐藤選手のほうが上手くて」
お互いをどう思うかと聞かれて、佐藤は記者会見でこう語った。
「優真とはジュニア……ノービスの頃からずっと一緒にやってきて、普段の練習も一緒になることが多いんですけど、やはりジャンプ、ステップ、スピン、全てがもうトップ選手だなという滑り。ぼくも真似できることはどんどん優真から学んでいって、ぼくも優真みたいになれるように、これからも頑張っていきたい、これからも二人で頑張っていきたいと思っています」
シニアに上がってからは、鍵山が一歩も二歩も先を歩んできた。佐藤には、置いていかれたくないという思いも強いに違いない。その思いが、佐藤のジャンプの難易度を押し上げた。一方鍵山は、佐藤のことをこう形容した。
「小さい頃からジャンプは佐藤選手の方が上手くて、今もそうですけど、ジャンプだけじゃなくて細かい、自分とは違う表現の仕方だったり、滑りだったり、そういうものはすごく上手いなって見てて思います」
鍵山は夏に怪我をして、4ルッツをプログラムからはずし、本大会では4ループも回避した。佐藤がルッツとフリップの成功率をさらに安定させれば、鍵山との点差が縮まっていく可能性は高い。
お互いがこうして尊敬の念を見せる中で一つ確実なのは、二人のライバル関係が双方を成長させてきたことだ。鍵山は、こう続けた。
「(佐藤と)試合をたくさん一緒に出れることは自分にとっても良い経験になるし、練習も一緒にしたりすることで自分のモチベーションが上がったり、良い経験になっている。良きライバルでもあり、良い存在。自分も負けないように頑張っていきたいなと思っています」
どの競技でも、こうした良いライバルの存在は成長に欠かせない。今が伸び盛りであるこの二人の未来には、さらに素晴らしいキャリアが待ち受けていることだろう。
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