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<トップスターのメンタリティ>千葉ジェッツの絶対的エース富樫勇樹が、無得点でも涼しい顔でいられるワケ
text by
吉川哲彦Akihiko Yoshikawa
photograph byB.LEAGUE
posted2021/11/19 11:04
11月18日時点で一試合平均13.0得点、アシストもリーグ全体7位の平均5.9をマークしている富樫。今季は要所で見せる「ディープスリー」でも話題に
新潟との第2戦終了後の記者会見に登壇した富樫は、滋賀戦と北海道戦の結果を受けて心境の変化があったかどうかを問われ、「特にないです」と答えている。普段から会見では顔色一つ変えずに受け答えすることが多い富樫だが、この日も一貫して淡々とした表情を貫いた。そういったところも富樫はブレない。
「シュートを決めたい、決めなきゃいけないという気持ちはもちろんありますが、入らない日もある。NBAを見ていても、(ステフィン・)カリーが11本中0本という試合があったのを見たことがありますし、(ジェームズ・)ハーデンが16本中1本だった試合を見たこともあります。それが10試合も続くようだと何かを変えなきゃいけないのかなと思いますが、長いシーズンでそういう試合があるのもしょうがないと思って切り替えなきゃいけない」
この新潟との第2戦は、前半の11点ビハインドを一度逆転してその後シーソーゲームになったが、その中で、181cmの納見悠仁にポストアップされ、ゴール下への侵入を許して得点される場面が2度あった。そこで一旦富樫をベンチに下げるという選択肢も頭をよぎるところだが、大野篤史HCは最後まで富樫をコートに立たせ、富樫は3点差の残り9秒にフリースロー2本を決めて千葉の勝利を決定づけた。これについて、富樫は以下のように振り返る。
「1対1で試合をしているわけではないし、僕のサイズではポストアップされれば必ずミスマッチになる。HCが試合全体を見てプラスだと思うから僕を長い時間コートに置いてくれているんだと思いますし、やられたから交代という感じにはならない」
富樫がコートに立つメリット
事実、これまでも富樫は167cmというサイズの不利を突かれてポストアップを仕掛けられることが少なくなかった。対戦相手としては当然の策だ。それでも千葉はこれまでに天皇杯で3度、リーグで1度頂点に上り詰めている。優勝にあと一歩届かなかった2018-19シーズンも、52勝8敗というB1歴代最高勝率。その土台にディフェンスがあるのはもちろんだが、富樫を軸に大野HCが作り上げてきたオフェンスの破壊力によるところも大きく、千葉が強豪の座を確固たるものとしているのは、富樫がコートに立つメリットを最大限に活かし、デメリットを最小限に抑えた結果でもある。