「西武の単独指名だろうなと思っていたので。小園（健太／市和歌山）、風間（球打／ノースアジア大明桜）、佐藤（隼輔／筑波大）が競合して、自分は単独で交渉権確定だろうと。2日くらいネットで西武の寮とか調べていました」

　ドラフト会議当日に「隅田最大6球団指名も」と報じたメディアもあったが、隅田は「絶対ないわ。マスコミの人も駆け引きをしているのだろうな」と、現実として受け止められずにいた。

　その一方で、スカウトの熱意も感じていた。とくに広島の末永真史スカウトは、ドラフト会議の前々日まで日参してくれていた。

　結果的に西武、広島、巨人、ヤクルトの4球団が隅田に入札。隅田知一郎という存在を競合してまでほしいと認めてもらえた。「自分が一番ビックリした」と言いつつも、隅田はすでにプロの厳しい生存競争を生き抜く覚悟を決めている。

「大学で頑張ってきたことをプロにつなげるのではなく、また一からプロでやっていかないと通用しないと考えています。といっても、周りに流されずにやるのは今までと変わらないので。それを貫いていけば、壁に当たっても乗り越えられると思います」

「ボロボロになるまで投げるつもりなんで」 ©Takahiro Kikuchi

「ボロボロになるまで投げるつもりなんで」

　うどん屋で昼食中、武田監督から「プロで通用しなくても、バッティングピッチャーで採用してもらえるように取り組めよ」と話しかけられると、隅田はこう答えた。

「いや、バッティングピッチャーはできないと思います。ボロボロになるまで投げるつもりなんで」

　平静に見えて、その内側には熱い血が流れている。隅田知一郎のプロ野球への挑戦がいよいよ始まる。