だが、隅田は「この日の投球だけではドラフト1位にはなっていなかったと思う」と振り返る。大学選手権が終わった後、隅田はブライトに痛打を浴びた反省から、ストレートに磨きをかけていたのだ。

「大学選手権ではブライトのインコースを突こうと投げたストレートがシュートして、甘く入ってしまいました。もともと右打者のアウトコースに投げるのは得意だったんですけど、インコースはリリースで引っかけたり、球持ちが悪かったり得意ではなくて。そこで右のインコースに投げ切るための投げ込みをしました。最初は感覚のいいアウトコースから始めて、徐々に内側へとコースをズラしていくんです。そうやって、右のインコースにも同じリリース感覚で投げられるようになりました」

　プロ志望届を提出後、プロ球団との面談が解禁となってからはスカウトから助言を受けることもあった。

「日本ハムのスカウトの方から『もう少しカーブを投げてみたら？』と言われて。今まではスライダーを抜くようにしてカーブを投げていたんですけど、秋のリーグ戦では107～108キロくらいのスローカーブを投げるようになりました」

　スローカーブの効果はてきめんだった。打者が反応できず、容易にカウントが取れるようになったのだ。

「ピンチの場面であえて1球目にスローカーブで入って1ストライクを簡単に取れるようになったし、インハイに真っすぐを見せた後に決め球として外にスローカーブを使うようにもなりました」

　つまり、勝負球として使える球種が従来の6種類から7種類まで増えたのだ。

西武の“1位指名明言”に「震えました」

　新型コロナウイルスのワクチン接種を受けるため登板しない期間もあったものの、隅田は秋も順調に階段を上っていた。

　10月3日の日本文理大戦で7回11奪三振無失点と好投した5日後、西武の渡辺久信GMが隅田を1位指名することを明言した。どの球団も煙幕を張るなか、12球団で最初に指名選手を公言したのが西武だった。

　隅田はこの時、「震えましたね」と意気に感じていたという。

「ドラフト1位でプロに行くことは自分の学生野球での目標でしたから。しかも、満場一致で1位と聞いて、すごくうれしかったです」

　大学進学時の経緯もあるだけに、最初に手を上げてくれた西武への思いは強かったのではないか。そう尋ねると、隅田は「もちろんそうなんですけど」と答え、こう続けた。

【次ページ】　「ボロボロになるまで投げるつもりなんで」