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藤井聡太19歳 “泣きながら勝った小学校3年生”が10年弱で《史上最年少四冠・竜王獲得》…タイトル経験者が「力負け」と脱帽する成長の源とは
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by日本将棋連盟
posted2021/11/14 06:01
10代にして竜王獲得、そして史上最年少四冠を成し遂げた藤井聡太
「豊島竜王はトップクラスの実力者です。藤井さんはどんどん強くなってはいますが、まだ全てが完璧というわけではない。そういう意味では、ここ数年トップの位置にいる豊島竜王相手に負けが込むのは、不自然なことではないかと」
佐藤紳哉七段は「これから豊島竜王と藤井二冠は数多く戦うことになると思うんですよね。なので、あまり根を詰めて考えるよりも、ちょっと傍観しつつ単純に楽しみたいなと」と少し冗談めかしていたが、プロとしても2人の対局に注目しているのは間違いなかった。
「19番勝負」とも称された2人のトリプルタイトル戦の結果は、王位戦は4勝1敗で藤井の防衛、叡王戦はフルセットの末、3勝2敗で藤井が豊島から叡王を奪取。そして竜王戦では藤井が圧巻の4連勝。史上最年少となる四冠獲得を成し遂げたのだった。
実際に藤井聡太と対局した中村太地七段の重い言葉
<名言4>
渡辺明名人や羽生善治先生など、非常に強い方と対局した際には"序盤からノーチャンスで負ける将棋"が往々にしてあります。今回の藤井二冠との対局も似た感覚でした。
(中村太地/NumberWeb 2021年3月15日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/847391
◇解説◇
藤井聡太の強さを対局相手として経験したのは中村太地七段だ。
過去には羽生善治九段から「王座」を奪取してタイトルホルダーになったこともある実力派だが、2021年3月10日に行われた順位戦B級2組の最終戦で藤井二冠と対局し、127手で敗れた。
相掛かりの戦型で進む中で中村七段は「7二金」という事前に準備していた作戦を繰り出したが、そこからの藤井二冠の「柔軟な発想」による対応で、構想力勝負になったという。終盤以降は中村七段も△1五角など勝負をかけた手を放ったが、藤井二冠の「正確かつ完璧な対応」によって、最終的には投了に追い込まれる展開だと振り返った。
対局と同等、いやそれ以上に中村七段の記憶に強く残ったのは、感想戦だった。お互いの手を振り返りながら“何か良い手はなかったか”と検証を重ねる場なのだが、「どうやら私の方に思わしい手はなかった」という。
それほどの強さだったからこそ、現代が誇る名棋士2人の名前を挙げたのだ。
中村七段は「ハッキリと反省点がわからない――それは『力負け』と呼ばれるものの正体なのかもしれません。それを乗り越えるためには、私自身が実力をつけるしかないのですが」とも話していたが、今期順位戦で3連勝スタートを切り、B級1組昇級へ好スタートを切った。あの敗局で得た経験を生かす。その思いで盤面に向かっているのだとすれば、藤井聡太という人間が与えた影響は大きいのである。
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