センターを守ったが打球の落下点に着くのが早く、大飛球も簡単に捕球して見せた。5102刺殺はNPB記録。そして機敏に走者を刺した。本来、外野手が走者を刺す「補殺」は、右翼手が多いものだが、1973年には福本は中堅で13補殺を記録している。

　福本の後、パ・リーグには多くの韋駄天が登場したが、13年連続盗塁王の福本の前に、無冠で終わった選手も多い。日本ハムで通算352盗塁した島田誠、ロッテで284盗塁した弘田澄男などは盗塁王のタイトルを獲得することはなかった。

上田監督の“言い間違い”で引退する羽目に

　1988年、阪急は、ブレーブスをオリエント・リースに売却。翌年からオリックス・ブレーブス（のちブルーウェーブ）になることとなった。41歳になる直前の福本はこの年、92試合に出て1本塁打21打点3盗塁、打率.253。往年の力こそなかったとはいえ福本は「野村克也さんみたいに燃え尽きるまでやりたい」と思っていた。

　しかし上田利治監督が西宮球場の最終戦で「今日でやめる山田（久志）、残る福本」というところを「今日でやめる山田、福本」と言ってしまった。最近のYouTubeでは、この日、福本は家に帰らず。明け方4時まで飲んだと言っている。それでも翌日には引退を決めていた。「入団するときには加藤（秀司）と一緒に入って、やめるときには山田（久志）と一緒にやめたんや」と話している。恬淡とした福本らしいいい話ではある。

　ただ、オリックスのコーチになって、同級生の門田博光が現役で頑張っているのを見て「うらやましかった」と言っているのは切ない話だ。福本が門田と同じ1992年まで現役を続ければ、イチローのデビューに間に合っていたことになるのだ。

福本の解説は一種の「芸」になっている

阪神時代の新庄剛志に指導する福本氏　©Sankei Shimbun

　引退後はオリックスや阪神のコーチを短期間務めたが、大部分を解説者として過ごしている。福本豊の解説は、一種の「芸」になっている。

　得点が入らない試合に、
「たこやきみたいやね」

　ようやく1点が入ると、
「たこやきにつま楊枝ついたね」

「試合展開が遅いですね」とアナに言われると、
「はよしたらええねん」

「この選手は夏場になると、ばてるんですが」と言われると、
「寝とったらええねん」

　打てば響くようだが、適当に言っているとの指摘もなくはない。

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