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女子レスリングに高校生ニューヒロイン! 藤波朱理(17)が世界選手権を圧勝「自分がパリに行きたい」<東京五輪金・向田真優との争い?>
posted2021/11/08 06:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
KYODO
東京五輪で4階級金メダルに輝くなど、日本の金城湯池が続く女子レスリング界に、また新たなホープが誕生した。ノルウェーのオスロで10月上旬に開かれたレスリング世界選手権女子53kg級で、17歳の藤波朱理(三重・いなべ総合学園高校3年)が金メダルを獲得。初出場ながら全4試合で無失点のテクニカルフォール勝ちという圧巻の戦いに、世界が目を見張った。
日本の高校生の世界選手権優勝は、東京五輪女子50kg級を無失点で制した須崎優衣が2017年に達成して以来の快挙。藤波は試合直後のインタビューで「素晴らしい気分。支えてくれた家族、友人、仲間に感謝したい」と英語で受け答えするなど、早くも大物感が漂っている。
いなべ総合学園高レスリング部で監督を務める俊一さんを父に持ち、兄の勇飛も世界選手権メダリストというレスリング一家に育った。現在は柔軟性の高い動きから繰り出す片足タックルを最大の武器としつつ、グラウンドでのテクニックを磨いている最中だ。手本にしているのは東京五輪男子フリースタイル65kg級金メダリストの乙黒拓斗。
「東京五輪を見て本当にすごいなと思った。カウンターもできるし、自分から攻めることもできる。見ていて面白いレスリング、たくさん展開のあるレスリングは自分も意識していること」と言い、乙黒の動画を毎日見ているという。
目標はパリ五輪優勝
探求心も光る藤波には、さらに意志の強さとメンタルの安定感という武器もある。初のシニア大会出場だった昨年の全日本選手権で53kg級を制した時も堂々たる立ち居振る舞い。「小さいころからあこがれてきた舞台ですが、優勝を狙って勝てたのがうれしい。自分から先に攻めたのが勝因だったと思う」と冷静に分析する姿が印象的だった。
目標はもちろんパリ五輪優勝だが、女子53kg級には東京五輪の金メダリストである24歳の向田真優がいる。向田がライバルならきわめて激しい代表争いが待ち受ける。しかし、藤波に臆する様子はない。
「国内に五輪チャンピオンがいるのは逆にチャンス。世界で一番強い選手を倒して自分がパリに行きたい」
どんなに強気な言葉を口にしても地に足がついているのが藤波。目の離せない逸材がまた1人増えた。