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家庭科の先生がなぜ女子プロレスラーに? 「ジャイアント馬場の技」を使う“177cmの大器”レディ・Cの快進撃…岩谷は「1年以内に化けます」
posted2021/11/02 17:02
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
1年前、女子プロレス団体スターダムから、レディ・Cという謎めいたリングネームの新人がデビューした。177cmは現役日本女子プロレスラー最長身。リングインする際のクールな表情も含め、いかにも“大器”といった雰囲気がある。
ただ実際のレディ・Cは、どちらかといえば“雑草”だ。異色の経歴の持ち主でもある。もとは中学、高校の教員。担当科目は家庭科だった。
“家庭科の先生”からプロレスラーに…家族は大反対
「仕事で悩んでいる時に、同性の先輩が元気づけてくれたんです。その時にプロレスのことも教えてくれて」
ある日、思い立って新日本プロレスを見に行った。後楽園ホールで当日券を並んで買ったそうだ。予備知識はほとんどなかったが「こんな凄い世界があるのか」と衝撃を受けた。
「エルボーの打ち合いでは選手の汗がこっちまで飛んでくるくらい迫力があって。お客さんの熱も凄かった。試合を見ていると、プロレスは鳥肌が立つというか全身の毛穴が開くような興奮、感動がありますね」
プロレスラーはどんな人たちで、どんな練習をしているのか。興味が止まらずに向かったのがスターダムの一般向けワークショップ。プロ選手の指導で練習して、レスラーになりたいという気持ちが抑えられなくなった。それは教師という安定した職業を捨てるということだ。当然、家族は大反対。学校の同僚たちは、そもそも現実的なこととして受け取らなかった。
「だから本当にプロレスラーになったと伝えると、凄く驚かれますね(笑)」
たぶん、彼女を知る全員にとって驚きだったはずだ。スポーツに興味がなかったし、運動神経も悪かった。中学時代は剣道部で活躍したが「背の高さで勝てただけです。出せば面が取れたんですよ(笑)」。
咄嗟に出た“ジャイアント馬場さんの技”
実際、スターダムに入門してすぐ壁が待っていた。基礎体力の部分で基準に達するまで時間がかかった。
「そこが一番、長かったし辛かったです。泣いたり吐いたりしながら、しがみつくようにしてなんとかデビューできた感じでした。とにかくプロレスがやりたくて」
入門から1年かかってのデビュー。自力初勝利まではそこからさらに10カ月を要した。すぐ上でもキャリアが1年以上離れた先輩ばかり。そう簡単に勝たせてはもらえない。
「でも、結果として時間がかかったのがよかったのかもしれないです」
促成栽培ではなく、じっくり実力を蓄えることができた。勝ちたい一心で闘い方を考え、工夫もした。そうして使うようになったのが、ジャイアント馬場の技だ。長身を活かそうと“東洋の巨人”を参考にしたのである。