濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
家庭科の先生がなぜ女子プロレスラーに? 「ジャイアント馬場の技」を使う“177cmの大器”レディ・Cの快進撃…岩谷は「1年以内に化けます」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/11/02 17:02
10月17日後楽園ホール大会の岩谷麻優戦にてビッグブーツを繰り出す“元家庭科教師レスラー”レディ・C
ヤシの実割りに河津落とし。そうした技を使うようになると、もともと得意なビッグブーツ(フロントキック)の意味合い、見え方も変わってくる。8月29日の岩谷麻優戦で咄嗟に出たのは脳天唐竹割り。頭頂部に振り下ろすチョップで、もちろんこれも“馬場さんの技”だ。
「なかなか勝てなくて出口が見えない中で、光がさしてきたのが麻優さんとの試合でした。それまでは緊張しながら、考えながら闘っていたんですが、その時は自由に、楽しくやれました。脳天唐竹割りを出した時にお客さんがどよめいて、私はこの方向性でいいんだって確認もできました。それからは、自信を持って積極的に試合ができるようになった気がします」
スターダムのアイコンと呼ばれるトップ選手が作り出す独自の空間の中で自由に泳がせてもらったような試合だった。9月4日には新日本プロレスのメットライフドーム大会にスターダム提供試合で参戦。ふだん女子プロレスを見ない観客からも好評価を得た。“馬場さんの技を使う177cmの元教師”のインパクトは絶大だったのだ。
11月3日ビッグマッチで“フューチャー王座”に挑戦
自力初勝利は9月20日、アクトレスガールズから移ってきた月山和香とのシングルマッチ。初披露のジャイアント・バックブリーカーでギブアップを奪った。試合後は泣きながらマイクを握った。ノンタイトルの単なる1勝。しかしファンはそこまでの苦闘を知っていたから、心からの拍手で彼女を祝福した。会場は初めてプロレスを見た思い出の場所、後楽園ホールだった。
念願の1勝を掴んだことで道が開けた。10月にスタートしたタッグリーグに月山と組んでエントリー。11月3日のビッグマッチ、川崎市とどろきアリーナ大会では琉悪夏が持つフューチャー・オブ・スターダム王座に挑戦する。キャリア3年未満ないし20歳以下の選手が対象となる“新人タイトル”だ。
タイトルマッチ調印式。ウナギ・サヤカからセコンドの介入、凶器攻撃を使ってベルトを奪った琉悪夏を理路整然とたしなめる姿も印象的だった。
「乱入、凶器、反則を使っての戴冠で、果たしてベルトの価値が上がるのでしょうか。レディがこのベルトを清く正しく美しい(うつくC)ベルトに戻します」
「教師らしい正論」も彼女の武器
直後のインタビューではこう語っている。
「ウナギさんが巻いていた時から、ベルトは意識していました。初参戦の月山さんと防衛戦をしたり、そういう形ではいけないんじゃないかと。生え抜きの私がチャンピオンになって、正しいベルトにしなきゃいけないと。琉悪夏さんは反則を使って勝ちましたよね。でも私の中でフューチャーのタイトルマッチといったらスターライト・キッドさんと渋沢四季さんの初代王座決定戦。技術ではなく気持ちでガムシャラに闘う試合で、それこそ若手のあるべき姿だと思います」