濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「タイガー・クイーンの涙を見た」佐山聡考案の“新技”で勝利も…彩羽匠戦で崩れかけた女性版タイガーマスクの“謎”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/10/28 17:01
デビュー4戦目で彩羽匠と対戦した“女性版タイガーマスク”タイガー・クイーン
防戦の場面が多かったタイガー・クイーン。しかしそれもまた新たな“引き出し”ではあった。スワントーンボム、さらにパワーボム2連発にラストライドと大技を喰らってもカウント2で返す。攻め込まれたからこそ、打たれ強さが見えたのだ。
フィニッシュは新技「タイガースープレックス2021」
そこからジャーマン・スープレックス2発、ツームストーン・パイルドライバーで反撃し、フィニッシュは「タイガースープレックス2021」。戦前、佐山が考案中だとしていた新技がこれだろう。
一方は腕を固め、もう一方はフェイスロックに捉えるチキンウィング・フェイスロック。これだけでもフィニッシュ技になるが、クイーンはそこから後方にスープレックスで投げてみせた。
これからはクイーンならではのオリジナリティを出していく必要がある。それが佐山とジャガー共通の見解だった。そうでなければ彩羽ほどの選手には勝てないという分析もあったはずだ。この新技が、まさに「ならでは」の部分だった。
ただ、このタイガースープレックス2021、新技ではあるがまったくのオリジナルというわけでもないのがポイントだ。チキンウィング・フェイスロックは、新日本プロレスを離れた初代タイガーがスーパータイガーと名を変えてUWF(第1次)のリングに上がっていた時の得意技。彩羽戦でのクイーンは、試合中盤にこの技を繰り出している。彩羽としてはそこから逃れようとしたところにスープレックスが待っていたわけで、中盤のチキンウィング・フェイスロックは伏線にもなっていた。
初代タイガーの“クローン”であるだけでなくスーパータイガーも取り込んでのファイトぶりを見せ、その上での新技フィニッシュ。歴史を受け継ぐと同時に新しい時代を作っていく、そんなタイガー・クイーンらしい試合だった。
彩羽「化け物でした」
もちろん、大苦戦だったのも間違いない。今回、観客により強い印象を残したのは彩羽だったのではないか。スターダムでの試合もそうだったが“敗れてなお強し”と思わせることができるのも一流の証だ。
クイーンはリングを降りるとセコンドのジャガーとともにバックステージに引き上げ、エレベーターに乗って会場を後にした。いつもと同じ完全ノーコメントだ。だから試合についてより深く知ろうと思ったら、敗れた彩羽に聞くしかなかった。
「倒さなきゃいけない相手がまた増えました。デビュー4戦目ですか。令和の女子プロレス、どんどん来ますね。スターダムもそうですけど、キャリアに関係なくポテンシャルの高い選手がどんどん出てくる」