濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「タイガー・クイーンの涙を見た」佐山聡考案の“新技”で勝利も…彩羽匠戦で崩れかけた女性版タイガーマスクの“謎”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/10/28 17:01
デビュー4戦目で彩羽匠と対戦した“女性版タイガーマスク”タイガー・クイーン
クイーンのことを、彩羽は「化け物でした」と評した。闘いにくい、不気味な相手でもあったようだ。クイーンの強さは「分からない」ところだと言う。
「プロレスラーは感情を出してなんぼ。特に女子は感情むき出しです。でも(クイーンは)マスクを被っているので感情、生態が分からない。それも強さだと思います。効いてるか効いてないか分からないし“よし!”というところでやり返されてしまう」
「(クイーンの)マスクの中の目は涙でいっぱいでした」
クイーンはこれまで公の場で一言も発していない。リング上で声を出したり、感情を露わにしたこともない。“正体不明”を徹底しているのだ。感情が伝わらないのはプロレスラーとしては大きなマイナスだ。だがそれは対戦相手にとって脅威にもなる。彩羽の言葉からの新たな発見だった。ただ彩羽は、こう付け加えてもいる。
「マスクの中の目は涙でいっぱいでした。自分、見ましたから。きっとそこが彼女の弱さだと思います」
ここまでわずか4試合、その中で山下りな、佐藤綾子、そして彩羽匠に勝ってしまったのだからとてつもない実績だ。タイガー・クイーンの存在は規格外と言うしかない。それでも彩羽は、隠されていた感情を見出した。タイガー・クイーンも苦しむ。痛みを感じるし、もしかしたら彩羽に怖さを感じたかもしれない。
おそらく今回の試合は、ライバルストーリーの第1話だ。彩羽は当然ながら再戦を望んでいる。それが実現した時、いよいよタイガー・クイーンの感情がむき出しになるのかもしれない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。