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《箱根駅伝予選会》「パチンコを週1にしてくれ」「青学大の原先生にも押しかけて…」から始まった駿河台大の躍進<明治、中央も強い>
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byYuki Suenaga
posted2021/10/26 11:02
箱根駅伝予選会にて、初の本戦出場を決め喜ぶ駿河台大学のチームメンバーら
新参校が箱根初出場を勝ち取るまでには並々ならぬ苦労がある。山梨学院大を無名の大学から強豪校の一つに育て上げた上田監督も然り。就任10年目の徳本監督にも辛い経験は山ほどあっただろう。
レース後の囲み取材でそのことを聞かれると、監督は苦笑交じりにこれまでの歩みの一端を明かした。
「就任当初はほんとマンガの世界でした。タバコやお酒はやるなって、5年くらい言い続けましたからね。パチンコを週3回行くのを、週1回にしてくれないかとか(笑)。練習どうこうよりも、いかに生活習慣を変えるかの方が先でした」
「青学大の原先生からは『おめでとう』のLINEが」
炭酸飲料を飲んでいる選手には、なぜ牛乳を飲んだ方が良いのか、その科学的エビデンスをきちんと説明した上で納得させた。消灯時間を22時に早め、以降の携帯使用は禁止にした。選手が徐々に生活態度を改めていく中で、自身も少しずつ変化していったという。
「それこそ心理学の本なんて何十冊と読みました。選手の気持ちを理解しないと、意識を変えることなんてできないですから。それと名門と呼ばれる高校にはスカウトとは関係なく足を運んで、いろんなことを教えてもらいましたね。西脇工業高校の足立先生とか、大牟田高校の赤池先生、他にも高校の先生方にはずいぶん助けられて。先生方に応援していただいているのが自分の中でのすごい支えになってます」
続けて、意外な人物の名前を挙げた。
「青学大の原先生のところにも、僕の方から『聞きに行って良いですか』って押しかけていきました。同郷だから気にかけてくれたのか、原監督は聞けば何でも教えてくれます(笑)。こういうときは行けるぞとか、こういう雰囲気の時は注意しろとか。そう言えばさっき、『おめでとう』のLINEが入ってました」
寮生活の見直し、正しい動き作りの徹底、そしてミーティングの回数を増やすなどの改革には、先輩指導者たちからの温かい助言が生かされているのだろう。
箱根本戦初出場だからといって、遠慮する気はさらさらない
終始安定したペースで個人6位と活躍したブヌカだけではない。前回は個人200位以内に6名しか入らなかったが、今回は8名が入り、チーム全体として粘り強さを発揮した。
徳本監督は「僕が言うのも何なんですけど、本当に良いチームになりました」と胸を張る。
「4年生がしっかり力を発揮してくれて、そういう意味では去年の失敗は補えたかなと思う。僕は現役時代から、どうやったらレースが面白くなるか、そればかり考えて走っていた記憶がある。だから本戦でも駿河台ってなんかやってくれそうだよねって、そういう雰囲気をだしてスタートラインに立たせたいと思います」
かつて法政大のエースとして活躍を刻んだ舞台に今度は監督として挑む。楽しみですか、と聞くと、こう言って笑顔を見せた。
「一矢報いたいですね」
初出場だからといって、遠慮する気はさらさらない。予選会出場組の、一泡吹かせる走りに大いに期待したい。
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