Number Web MoreBACK NUMBER
《現役引退》誰よりも批判されたFA投手・大竹寛が、「誰よりも長く巨人軍で生き残ったFA投手」になれた理由
posted2021/10/24 17:00
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
Kyodo News
「移籍が成功だったかどうかなんて、引退してから考えることだ。もしかしたら引退しても分からないかもしれない。死ぬ直前ですら、成功だったか失敗だったかなんて分からないかもしれない」
プロスポーツ選手の移籍について、横浜FCの中村俊輔は自著『察知力』(幻冬舎新書)でそう書いた。
最近、巨人・大竹寛の野球人生を見ていると、ふとこの言葉を思い出す。今季、37歳の右腕は中継ぎ投手として14試合に登板、防御率1.42の安定度を誇り、7月19日のDeNA戦から12試合連続無失点中だ。現在一軍投手陣の最年長として、ブルペンの中心的存在を担っている。
「オアシスな先輩。大竹、そうです!」
以前、元・巨人投手コーチの川口和久氏とトークイベントを行った際、「ラーメンの食べ過ぎか、大竹投手の先発時代はよく足をつっていたけど、リリーフの短いイニングだと大丈夫でハマったね」と背番号17の大好物ラーメンとかけて嬉しそうに語ってくれた。
昨季の一軍復帰時には宮本和知投手総合コーチが、「明日からムードメーカーを呼びます。誰だと思いますか? 一番人間的に優れているというかね、オアシスな先輩。大竹、そうです! 寛ちゃんがいい風を持ってきてくれるんじゃないかな」なんつってスポーツ報知SNSで歓迎のコメントを出している。
ついでに体重増量を掲げる20歳の同僚・戸郷翔征には正しいラーメンの食べ方を伝授。巨人公式のLINEスタンプも半笑いのイラスト吹き出しは「まいったな~」なんてひとりギャグ枠のような扱いだ。
そんなみんなに愛される仕事人・寛ちゃんだが、ここまでのキャリアは決して順風満帆ではなかった。大竹は広島時代に4度の二桁勝利を記録、2013年オフに巨人へFA移籍してきたが、幾度となく「失敗のFA」や「貯金のできない投手」と味方のはずのG党からさえも批判されてきた。