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《現役引退》誰よりも批判されたFA投手・大竹寛が、「誰よりも長く巨人軍で生き残ったFA投手」になれた理由

posted2021/10/24 17:00

 
《現役引退》誰よりも批判されたFA投手・大竹寛が、「誰よりも長く巨人軍で生き残ったFA投手」になれた理由<Number Web> photograph by Kyodo News

2020年はリリーフとして29試合に登板して防御率2.59、1勝2敗16ホールドを記録。リーグ優勝に大きく貢献した

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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Kyodo News

巨人の大竹寛投手(38歳)が、今季限りで現役を引退することが発表されました。優しい人柄で知られ、“寛ちゃん”の愛称でチームメイトに慕われた大竹投手。広島からFA移籍した当初は批判もありましたが、自らのピッチングで評価を覆してきました。昨シーズンもリリーフとしてリーグ優勝に貢献した大竹投手の記事を特別に再公開します。【初出:NumberWeb2020年8月21日、肩書きなどすべて当時】

「移籍が成功だったかどうかなんて、引退してから考えることだ。もしかしたら引退しても分からないかもしれない。死ぬ直前ですら、成功だったか失敗だったかなんて分からないかもしれない」

 プロスポーツ選手の移籍について、横浜FCの中村俊輔は自著『察知力』(幻冬舎新書)でそう書いた。

 最近、巨人・大竹寛の野球人生を見ていると、ふとこの言葉を思い出す。今季、37歳の右腕は中継ぎ投手として14試合に登板、防御率1.42の安定度を誇り、7月19日のDeNA戦から12試合連続無失点中だ。現在一軍投手陣の最年長として、ブルペンの中心的存在を担っている。

「オアシスな先輩。大竹、そうです!」

 以前、元・巨人投手コーチの川口和久氏とトークイベントを行った際、「ラーメンの食べ過ぎか、大竹投手の先発時代はよく足をつっていたけど、リリーフの短いイニングだと大丈夫でハマったね」と背番号17の大好物ラーメンとかけて嬉しそうに語ってくれた。

 昨季の一軍復帰時には宮本和知投手総合コーチが、「明日からムードメーカーを呼びます。誰だと思いますか? 一番人間的に優れているというかね、オアシスな先輩。大竹、そうです! 寛ちゃんがいい風を持ってきてくれるんじゃないかな」なんつってスポーツ報知SNSで歓迎のコメントを出している。

 ついでに体重増量を掲げる20歳の同僚・戸郷翔征には正しいラーメンの食べ方を伝授。巨人公式のLINEスタンプも半笑いのイラスト吹き出しは「まいったな~」なんてひとりギャグ枠のような扱いだ。

 そんなみんなに愛される仕事人・寛ちゃんだが、ここまでのキャリアは決して順風満帆ではなかった。大竹は広島時代に4度の二桁勝利を記録、2013年オフに巨人へFA移籍してきたが、幾度となく「失敗のFA」や「貯金のできない投手」と味方のはずのG党からさえも批判されてきた。

【次ページ】 獲得時点から、反対のファンは多かった。

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大竹寛
読売ジャイアンツ

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