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「富樫に頼ってるじゃん」の声に千葉ジェッツ大野HCは…? 銀メダルの女子代表とBリーグ昨季王者に共通する「役割分担」の明確化
posted2021/10/22 17:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
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©CHIBAJETS FUNABASHI/Atsushi Sasaki
今年9月、東京五輪バスケ男女日本代表キャプテン対談のなかで、高田真希が女子代表チームが2位になれた要因として「役割分担」をあげた。
「トム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)が、各選手としっかりコミュニケーションを取って、『君にはこういうことを求めている』と明確にしてくれたのが大きかったです。(中略)何を求められているのかが明確になっていたので、良いプレーができて。それがメダルにつながったと思います」(日経マガジンスタイル×Number Bリーグ2021―22シーズン開幕特別号)
この話で思い出したのが、昨シーズンのBリーグを制した千葉ジェッツふなばしの大野篤史HCのチーム作りだ。ジェッツは各選手が得意とするプレーをして、それを結集させて勝ってきたチームに見えるからだ。王者として戦う新シーズンにむけ、チーム作りのコンセプトと想いについて指揮官に語ってもらった――。
「大事なのはタクティクスよりもエナジー」
今年6月、優勝翌日のインタビューで大野が挙げたキーワードがあった。シーズンの行方を決めるプレーオフのCSを戦う際に、ハッとさせられた言葉だという。
大野 アシスタントコーチ(AC)のゾラン(・マルティチ)にこう言われたんです。『大事なのはタクティクス(戦術)よりもエナジーだぞ』。もちろんタクティクスは大切です。だけど、その前にエナジーがなければ、いくら良いタクティクスを用意したとしても、大事なところで勝てないと。
例えば(守備時の)カバレッジなど、色々なゲームプランや戦術を決めますが、それがどれだけ素晴らしくてもエナジーがなければダメ。会社などで『崇高なミッションやビジョンを定めても、情熱や魂がなければ、絵に描いた餅で終わる』というのと同じことです。あとは、そうやってACが言える環境を作っていくことが僕の仕事だと思っているので。
――「言える環境」とはどのようなものなのか?
大野 スキルコーチ、アシスタントコーチ、アナリストなどがチームにいますが、『みんなにもチームをよくする責任がある。結果に対しての責任は俺が負うけど、チームのために必要だと感じたことがあれば積極的に口を開いてほしい』と話しています。もちろん、『みんなの意見を聞いたうえで、最終的にそれを(採用するかどうか)決めるのは俺で、その代わりきちんと責任を負う』ということもあわせて伝えています。
――その狙いは?
大野 彼らには彼らの責任があり、その責任があるから、やりがいやモチベーションを感じられるとも思うので。つまり、『チームを作るために自分は必要な人間なのだ』と感じてもらいたいのです。それはコーチだけではなく、選手やトレーナーもそうです。