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「富樫に頼ってるじゃん」の声に千葉ジェッツ大野HCは…? 銀メダルの女子代表とBリーグ昨季王者に共通する「役割分担」の明確化
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by©CHIBAJETS FUNABASHI/Atsushi Sasaki
posted2021/10/22 17:00
Bリーグ昨季王者千葉ジェッツふなばしの大野篤史HC
――大野HCは以前から彼の守備での貢献を評価していましたが、昨シーズンは攻撃でも輝いていたように見えました。
大野 昨シーズン、原は『初めて自分にセットプレー(選手たちの動き方や役割を事前に作り込み、試合で披露する攻撃のプレー)が与えられた』というようなことを言っていたと思いますけど、実際にそうでした。彼の『ロール』がこのチームに必要だと思ったからです。それはもちろん、富樫にもあります。逆に、チームみんなでボールをシェアするプレーもあります。ただ、40分間、みんなで仲良くボールを回すだけで勝てると思いますか。
――というと?
大野 もちろん、ボールをシェアすることはとても重要です。ただ、相手にウィークポイントがあるときに、『ボールをシェアすることが大事だから』と、相手のウィークポイントを突かないとします。それは正しい攻撃ではないですよね。そこを徹底的につく役割の選手がうちはいるということです。
だから、自分たちのアドバンテージがある所を作り、ディスアドバンテージ(短所)をみんなで隠す。そして、そのアドバンテージをみんなで強調するというのが僕のバスケットかなと。
「エースの富樫に頼ってるじゃん」という批判
――ジェッツはBリーグが開幕してからのタイトル数も公式戦の勝利数も最多です。それゆえのやっかみもあるでしょうが、「エースの富樫に頼ってるじゃん。個人技で打開しようとしている」という一部の声は正しくないと?
大野 富樫に頼っている時間も、もちろんあります。その時間帯では頼っているというより、富樫に『託して』います。だから、彼は一生懸命に練習するし、責任を持ってチームのために働こうとします。
――『託す』ですか?
大野 はい。もし、それに対してチーム内から、不平不満が出てくるということであれば、僕の判断が間違っているのか、富樫のバスケットに対する姿勢や情熱などが足りていないのかということになるでしょうね。もちろん、現状でそこに不平不満を言う選手はいません。
ただ、今は『自分のセットプレー』がない選手にも、それを作ってもらうために努力しようと思ってほしいんですよ。だから僕は『プレータイムを仲良くみんなで共有しましょうね』とはしない。競争がない限り、選手は成長していかないと思うんですよ。
――確かにそうですね。
大野 (運動会のかけっこのように)みんなで手をつないで、『仲良く一緒に、1等賞でゴールしましょう』という状況はプロスポーツにはないんですよね。必ず、優劣はつく。だからこそ、大きな役割が欲しいなら、努力しないといけない。