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プロ野球スカウトに聞く「今年のドラフト、なぜ“1位指名公言”が西武とホークス2球団だけだった?」ドラフトウラ話《事前指名編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/10/19 17:10
明桜高のMAX157キロ右腕・風間球打(18歳)。事前指名していたソフトバンクが単独で交渉権を得た
「部内での集団感染で法政の試合があと回しになって、リーグ戦で山下が投げる試合が、結局ドラフトの前日(10日)になった。これは大きかった」
ドラフト前日といえば、例年なら、もう1位候補も3、4人に絞られ、2位以下の候補もほぼ決まっていて、その内容を確認するための会議が形だけ開かれる……そんな状況だという。
「こんなにバタバタしたドラフトありましたかね」
「それが今年は、山下輝っていうグリグリの1位候補の“直近”が、ドラフト前日までわからないという異常事態になった。パ・リーグはどこのチームもサウスポーがほしい。打撃ベスト15のうち、10人が左バッターですよ。それ以外にも、手ごわい左バッターが多い。剛球左腕の現状を見届けてからじゃないと、作戦だって立てられませんよ」
(※山下輝は広島とヤクルトから1位指名を受け、抽選の結果ヤクルトが交渉権を獲得)
加えて、もう1人の1位候補・佐藤隼輔投手(筑波大・182cm83kg・左投左打・仙台高)までが、リーグ戦初戦の投球中に右腹斜筋を痛めて、リハビリ中だというのだから、ドラフト対応は混迷に混迷を極めたという。
「ドラフト直前のリーグ戦で、ベンチに入って肩慣らししたっていうのが、無理にデモンストレーションしたんじゃないか……とか、こういう時って、邪推が流れるじゃないですか。腹斜筋って、ピッチャーにとってすごく大切な部位だし、過去にそれで苦労した選手もいますからね。決断が難しかった。とにかく、こんなにバタバタしたドラフト、今までにありましたかね……いろいろな意味で、忘れられない年になりそうですね」
(※佐藤隼輔は西武から2位指名された)
コロナにさんざん振り回されたこの世の中で、野球界も、決してその例外ではなかった。その奮闘は、なかなか人に知られることはないが、そんな渦中で、およそ100名ほどのプロ野球スカウトは、間違いなく果敢な「戦士」たちであったことを忘れてはならない。<ドラフト楽天編から続く>
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