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他球団スカウトが語る「なぜ楽天はドラ1~ドラ3まで野手で固めた?」「“とりあえずピッチャー”が崩れ始めた」ドラフトウラ話《楽天編》
posted2021/10/18 17:02
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sankei Shimbun
「1位の単独指名が6人挙がったじゃないですか。しかも高校生の野手が2人ですよ、ピッチャーじゃなくて。こんなドラフト、最近では珍しいですよ。こりゃあ、今年は荒れるぞーって、みんなで話してたんです」
こうプロ野球スカウトは語る。今回のドラフト会議で他球団と指名が重複せず、単独指名(一本釣り)になったのは次の6選手だ。
日本ハム・達孝太(投手・天理高)
ソフトバンク・風間球打(投手・明桜高)
楽天・吉野創士(外野手・昌平高)
ロッテ・松川虎生(捕手・市立和歌山高)
オリックス・椋木蓮(投手・東北福祉大)
中日・ブライト健太(外野手・上武大)
達孝太、風間球打、椋木蓮の3人はドラフト前から「1位候補」に挙げられていたが、松川虎生、吉野創士、ブライト健太は、「2位で消える選手」という前評判が支配的で、
「第一回選択希望選手……」
のアナウンスの後に、彼らの名が呼び上げられた時は、私もそうだったが、他球団の控え室では、「あーっ」という声が上がったに違いない。このスカウトの証言は続く。
「わかるんです、あとになれば。みんな、それなりに理由がある。中日は攻撃力が弱い上に、平田(良介)も心臓病を公表した。何がなんでも、打線の軸になれそうな野手にいくのは当然だし、田村(龍弘、27歳)の後にレギュラーを望めるキャッチャーが見えないロッテが、松川でいくのもわかる。
でもね、ドラフトっていうのは、それでも『とりあえずピッチャー』っていうのが常道なんですよ。長くスカウトやってる者ほど、そういう先入観みたいなものを持っている。野手を獲らなきゃならない年でも、まず1位で投手押さえてから……それが、去年あたりからひっくり返されている。西武が、早川(隆久、現・楽天)外して、渡部(健人・桐蔭横浜大)にいったでしょ。あと、その前(2018年)に阪神が近本(光司、大阪ガス)を1位でいって、楽天がその翌年でしたか、同じ大阪ガスの小深田(大翔)をやっぱり1位でいった。そこらへんからですよね、ドラフトの“セオリー”みたいなものが変わってきたのは」
「普通はピッチャーを乗っけたくなるでしょ」
たとえば今年の楽天だ、という。
「上から3人、野手並べたでしょ」