球道雑記BACK NUMBER
〈阪神ドラフト2位〉4年前の“プロ断念”、大学リーグ戦は途中棄権… 174cm左腕・鈴木勇斗(21歳)、会見での涙のワケ
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph bySankei Shimbun
posted2021/10/15 11:04
阪神からドラフト2位指名を受けた鈴木勇斗(創価大学)。4年前の“プロ断念”からいかにして這い上がったのか――
たとえば彼が座右の銘にしている格言「耐雪梅花麗」。郷土鹿児島の英雄・西郷隆盛が甥の市来政直(いちき・まさなお)に贈った漢詩の一節だが、会見場でこの言葉を聞いただけで意味がピンときた報道陣は少なかったように思える。
元広島・黒田博樹の座右の銘としても有名だが、こうした言葉をサラリと言えるところに彼のセンスが窺える。
また、「雪に耐えて梅花麗し」という意味に思いを馳せると、これまでの鈴木の球歴を見事に表した言葉であることに気づく。
創価大学の下級生時は2学年先輩の杉山晃基(ヤクルト)、望月大希(日本ハム)、小孫竜二(鷺宮製作所)の陰に隠れて、公式戦ではなかなか起用してもらえなかった。さらに、上級生になった3年時の春にはコロナ禍でリーグ戦そのものが中止になり、4年春には部内でクラスターが発生。リーグ戦を途中棄権する事態に見舞われた。
そうした“風雪”に、彼は耐え忍んできた。
身長174cm、体重83kgの体躯はけっして恵まれてはない。それでも、自身の探求心を貫き、書物や動画サイトを通じて、トレーニング方法などを改良。ロサンゼルス・ドジャースのクレイトン・カーショーの投球フォームを参考にして自身の飛躍に繋げたエピソードは各メディアでも幾度となく報道されている。
連投を苦にしない強靭なスタミナ
創価大・堀内監督は彼の長所について、こう付け加えた。
「小さいわりには体幹もしっかりしているし、体も強い。連投できるピッチャーなんでね。その辺りも成長できた理由にあるかと思います」
今秋のリーグ戦でも9月11、12日の共栄大学戦で連投するなど、10月11日までに行われた10試合のうち7試合に登板した。特筆すべきは被安打率(9イニング投げた場合、ヒットを何本打たれるかの目安)で、4.20に抑えている。所属が東京新大学野球連盟という点を考慮しても、この数字は驚異的といえる。
昨秋に勇退した岸雅司前監督は、2年前、鈴木がまだ大学2年生だった頃にこんな言葉を残していた。