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《ドラフト日本ハム3位》JR四国のショート・水野達稀21歳とは何者なのか? 中野(阪神)、小深田(楽天)、源田(西武)の系譜
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2021/10/11 19:40
日本ハムから3位指名された水野達稀(JR四国・遊撃手・170cm71kg・右投左打)
前の打者がカーブ、チェンジアップで三振したから、変化球待ってるんじゃないかと思った2球目。レジェンド・守安玲緒の浮いたチェンジアップを、ひと振りでライトスタンドに持っていった。
2年目の都市対抗「20歳の殺気」
1年目の都市対抗で、こんな感じで2本の長短打を放っていたから、去年の都市対抗はもっと楽しみにしていた。
四国銀行の補強選手としてドームにやって来た水野達稀に「2年目のジンクス」はまるで感じられなかった。
パナソニックとの2試合目。第1打席から、ベテラン左腕のカットボールを、右半身を開かずに痛烈なピッチャー返しのセンター前だ。
次の打席、やはり左腕のスライダーを絶妙のヘッドの返しで左中間を破ったときには、唸るのも忘れて……ものすごいスピードで一塁ベースをターンしていくその姿をホレボレと見つめるばかりだった。
さらに、打席でもっとすごい場面を見たのが、ベスト4を賭けたNTT東日本戦だ。
2度目の打席に入った水野達稀に、それまでほぼ完璧なコントロールで四国銀行打線を封じていたNTT東日本の先発・堀誠投手(立正大)の投球が突如乱れる。初球のスライダーから、そのあとの速球3つ、すべてリリースで指先の狂った投げ損じばかり。水野達稀にストレートの四球を許した。
この試合、私はテレビ中継の映像で見ていた。なるほど、ピッチャーが心を乱すわけだ……と思った。センターからの映像で見る水野達稀の「構え」にまるで隙がない。過剰な気負いも、相手を威圧するようなわざとらしい動きも何もない。樹齢100年の大木のように、静かにどっしりと立っている。
そして、投球を見極める姿勢だ。頭の位置とその視線が微動だにしない。
なるほど、これなら、どこへ投げても打たれるわ……社会人の一流チームのエースさえ気圧されるはずだ。「20歳の殺気」すら伝わってきた四球だった。
トヨタ自動車時代の源田壮亮(西武)が重なる
ショートストップ・水野達稀なのだから、「守り」の話もしなきゃならない。
逸材を語るのは忙しい。伝えたいことがいくらでもある。
JR四国・水野達稀のいちばんの長所は、バッティングもフィールディングも「頭が動かない」ということだ。目線がブレないからミートも捕球も正確で、激しく動いても、ボディバランスに乱れがない。
さらに、正確なスローイングだ。
ゴロを捕球してから両手がムダな動きをする内野手がすごく多い中で、このショートストップは捕球した次の瞬間、ボールを握った右手がしっかりトップの位置(耳の上方)にある。そこから腕を振り下ろすだけのシンプルな動きになるので、正確なスローイングができて、併殺時の二塁送球のような「応用問題」になっても、ベースに入った二塁手が一塁送球しやすい体のグラブ側に、キチッと投げている。