野球クロスロードBACK NUMBER
引退後の就活が心配でしょうがない!?
不況下におけるプロ野球選手の不安。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byTakuya Ishikawa
posted2011/02/01 10:31
現役引退後、小学校高学年用の漢字ドリルから勉強し直し、大学に入り直した大越基。日本学生野球協会の認可を得て早鞆高校の野球部監督になったのは、引退から6年目の夏であった
野球との縁を切って社会人として自立を目指した人も。
引退直後に、そのような現実を元プロの先輩から聞かされた選手OBがいた。彼は、あえて知人に頼らず求人雑誌で見つけた企業に応募し、晴れて営業職に就くことができた。現役時代は、20代で1000万円以上を稼いでいた選手である。
「野球関係の方には頼りたくなかったんですよ。これからの人生を社会人として生きていくためには自立しないといけませんから。会社の面接では驚かれましたよ。『なんで一般応募なんですか?』と(笑)。でも、そのほうが『それほどうちの会社に入りたかったんだ』と誠意が伝わると思って」
スター選手でも先行きは不透明──解説者、評論家という仕事。
一般企業以上に、野球関係の仕事に就くとなると現実的にはかなり厳しい。解説者や評論家は定年がないため年配のOBが多く、競争率も高い。仮に携わることができたとしても、安定した収入を得られる人間は少ない。
20年以上の現役生活で十分な実績を作り、今年から評論家として再スタートをきることができたOBですら、「野球をやっていたほうがある意味では楽だったかもしれません」と不安をにじませていた。
「2月からキャンプが始まりますが、交通費、宿泊費など費用はすべて自腹なんですよ。引退してからラジオや雑誌の仕事もいただいていますが、フリーで働いている方に1回の仕事で貰えるお金を聞くとびっくりします」
だからこそ、日頃の営業活動が必要だ。現役時代は日本一に貢献し、今はプロ野球中継などで解説を務める在京球団のOBは危機感を口にしていた。
「どこも不景気ですから。今は地方のゲームだと交通費が出ませんので仕事が回ってこないんですよ。だから、自腹でもキャンプは全球団を回って情報を得たり、野球関係者やメディアの方たちと交流を深めておく。そうすれば、『この仕事をお願いしよう』と声をかけていただける回数も増えるんで」
このように、現役時代に実績を残した者ですら安穏としていられないのだ。