プレミアリーグの時間BACK NUMBER
プレミア初昇格から5季目で大躍進のブライトン 三笘薫の保有元はオーナーもサポーターも人情派
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/10/05 17:00
レスターを撃破するなど、プレミア昇格5季目のブライトンが開幕から躍進の予感を漂わせている
個人的な初訪問は、2部でのリーグ戦も残り3試合となっていた2012年の4月。試合前、“新居”の住み心地を「カッパを持ってこなくていい」「風で耳がちぎれそうにならない」と冗談まじりに語ってくれた地元ファンたちは、プレミア昇格の望みを絶たれてしまった試合後も焦る様子はなく、中には「プレミアに上がって外国人がオーナーのよそよそしいクラブになってしまうぐらいなら、2部でもアットホームな雰囲気を楽しめる方がいい」と言う者さえいた。
オーナーはかつてポーカーのプロとして世界を転戦
あれから約9年半、ブライトンはプレミアを戦っている。2009年からオーナーの地位にあるトニー・ブルームは、推定13億ポンド(約1950億円)の資産を持つ富豪ではあるがイングランド人。祖父がクラブの副会長だったこともあり、自称「6歳から」という地元サポーターの1人でもある。
プレミアオーナーの富豪ランキングでは下から数えた方が早く、トップに立つシティのアブダビ王族が持つ資産の10分の1以下でしかないが、3部時代に財政難のクラブを買い取ったハートは熱い一方、その頭は極めてクール。かつてはポーカーのプロとして世界を転戦し、今ではベッティング業界のコンサルタント会社『スターリザード』をも経営するブルームは、優れた判断力と分析力でも評判の人物だ。
100名を超えるスタッフを抱える同社は、サッカーの世界における綿密な分析データを弾き出している。ブライトンは独自のデータ分析会社を持つクラブとしても貴重な存在だと言える。プレミアで、いわゆる「マネーボール」の理論を実践しているクラブとしては、昇格1年目の今季開幕戦でアーセナルを下し、第6節ではリバプールと堂々の打ち合いを演じたブレントフォードが代表例と理解されているのかもしれない。
同節でブライトンを救ったモパイも、2部時代のブレントフォードが安くフランスからイングランドに連れてきたアタッカーだ。ただし、そのブレントフォードを2012年から所有するマシュー・べナムには、ブルームが経営していたオンライン系ベッティング会社で分析の腕を認められた過去がある。
ビスマ残留の背景はホワイトの移籍金
師匠とも言うべきブルームのブライトンにおける革新的かつ効果的な戦力補強では、2018年にリールから獲得されたイブ・ビスマが最も新しい成功例の1人だ。
25歳マリ代表ボランチは、昨季プレミアでタックル数2位とインターセプト数4位を記録。ポッターが好む果敢なプレッシングを率先して行える存在で、ビッグクラブによる引き抜きが噂されていてもよい。